(以下は、tubefilter 誌のインタビュー記事を要約、編集したものであり、元の記事・内容については当社が独自に制作・発信しているものではございません。)
彼女はいかにしてTikTokから2022年世界バリスタ・チャンピオンシップに至ったのか?
モーガン・エクロスは、コーヒーが大好き。
世界バリスタ・チャンピオンシップに出場するには、コーヒーへの強い愛と、熟練の技を駆使した強い一杯が必要。そんな厳しい場において、彼女は全米代表として見事、準優勝を果たした。
マーケティング専攻の学生だった彼女。週3日地元のコーヒーショップでバリスタとしてアルバイトをしていたが、コーヒーを職業にするつもりだったわけではない。
現在彼女は、スポンサー企業でもあるOnyx Coffee Labsで働き、週3日バリスタとして勤務、営業時間外にはYouTubeやTikTok向けの動画を毎日撮影とうい多忙なスケジュールをこなす。さらに、バリスタ・チャンピオンシップに向け、日々の練習も欠かさない。
彼女にとって、TikTokはコーヒーコンテンツを作るためのスタート地点だった。その後、YouTubeにも進出、両プラットフォームに視聴者がいることは分かったが、その纏め方を知らなかったそうだ。
その後、エージェントを活用して登録者数を増やし(YouTubeのチャンネル登録者100万人)バリスタの競技会にも長期的に取り組んでいる。
- 簡単な自己紹介、そしてソーシャルメディアでのご活躍についてお話しいただけますか?
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モーガン・エクロスと申します。オレゴン州のコーバリスで育ちました。バリスタの仕事をしながら、2019年にコンテンツ制作を始めました。TikTokからスタートし、長編コンテンツの作成方法や編集、そしてコーヒーや教育、ツールのレビューなど、より深いテーマに取り組むため、2020年の1月からYouTubeを始めました。
TikTokでは当初、短いコンテンツを多く手掛けていました。今でも続けています。
YouTubeでは全く違うもの、レシピや、先ほども言ったように教育やキャリアに関するものを扱っています。そのため、YouTubeとTikTokでは全く違うタイプの視聴者に支持されています。
私は現在でも現役のバリスタとして働いており、コーヒー会社のマーケティングの仕事もしています。さらにMorganDrinksCoffeeという名前で活動していますが、これが最近の私のフルタイムの仕事です。すべての仕事を楽しんでいます。 - 他の3つの仕事に加えて、フルタイムの仕事をされているのですね。
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基本的にはそうです(笑)。
- YouTubeとTikTokの視聴者はまだ別々だと感じますか?
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そうですね。この1年で、ずいぶん近くなってきました。始めたころは、コンテンツの種類があまりにも違っていて、TikTokの方からは期待するほどの利益は得られませんでした。YouTubeでの成長は非常にオーガニックで、長い間、TikTokとは全く違いました。
YouTubeにShortsが出てきて、YouTubeにもTikTokと同じようなスケッチコンテンツを投稿することができるようになりました。TikTokの視聴者がYouTubeにも自然に融合していくようになってきました。
- では、かなり早い段階からTikTokを利用していたのですか?
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そうですね。musical.lyがTikTokになった直後から、コンテンツを見ていました。その数カ月後に制作を始めました。
- TikTokで動画を見るほうから動画を作ろうと思ったきっかけは何ですか?
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自分への挑戦でした。マーケティングの学位を取得しており、広告/コンテンツ制作の分野に進みたいと考えていました。写真やコピーライティングの経験は豊富でしたが映像の経験が殆ど無かったので。
TikTokを見て、「簡単なプラットフォームだから、動画編集のスキルを身につけることができそうだな」と感じたんです。そしたら、そこからどんどん広がっていったんです。
- 現在の活動について教えてください。TikTokからYouTubeに短いコンテンツをクロスポストしていますか?それとも、今でもそれぞれ異なるコンテンツを作っていますか?
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TikTokとは別に、YouTube Shortsをたくさんやっていた時期もありました。今は、作る量が多いので、クロスポストが多いですが、それぞれのプラットフォーム用にカスタマイズしたコンテンツを作ることもあります。対象となる視聴者に合わせて別々に作る場合もあります。
- TikTokとYouTube、それぞれのプラットフォームの傾向を教えてください
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少なくとも私の視聴者層は、TikTokが18~24歳、YouTubeが25~34歳中心でした。私がYouTubeの方では、コーヒー機器のレビューを多く行っているため、機器を購入する余裕のある、少し高めの年齢層になっているのだと思います。ただ、YouTube Shortsが加わったことで、両者の距離は縮まりつつあります。個人的には、必ずしも年齢層が高いわけではなく、コーヒーについて話したいと思っている人たちにアプローチできるので、とても楽しいです。
- Shortsの登場により、YouTubeのオーディエンスを確立し、より身近な存在になったと感じているクリエイターが多いようですが、あなたはどう思われますか?
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そうですね、そういう面はあります。短編と長編では求められるスキルが異なります。最近の短編コンテンツは、構造化された長編や高度に編集されたものよりも、人々が求めるものがずっと本物であるように感じます。そういう意味では、非常に参入しやすいと思います。YouTubeにShortsが加わったことで、私の経験では、視聴者は2つのサブオーディエンスに分かれるという興味深い現象が起きています。
私のShortsをよく見ている人は、私の長編コンテンツについて知らないか、見ていません。逆もまた然り。Shortsが加わったことで、このような現象が見られるようになったことは、本当に興味深いことです。
- 多くの人が、「Shortsの再生回数はすごいけど、誰も登録してくれない」と言っています。あなたもそう思いますか?
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そうですね。100万人近い登録者がいるチャンネルを見ると、その視聴回数が業界の標準に照らしてどの程度になるか、予想がつくと思います。おそらく、平均して20万から30万回程度の視聴回数だと思います。しかし、多くの人が短いコンテンツを求めて登録しているため、長編のコンテンツを見てみると、予想よりもずっと低い視聴回数ということがよくあります。YouTubeで見ることができるコンテンツが2種類あるので。
長編コンテンツを購読している視聴者は、今も長編コンテンツを視聴しています。Shortsという新しい視聴者が加わったことで総数が増えているだけの話です。 - 制作の面では、現在Shortsの割合が増えていますか?
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そうですね。基本的に、週3〜4本のShortsを制作し、それを1日おきに投稿する感じです。加えて週に1本長尺の作品を制作、それが今のペースです。
- 編集はすべてご自身でされているのですか?誰か一緒に作業している人はいますか?
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ずっとひとりで編集もやってきたんですが、もうこれ以上は無理!と思ったので、最近チームに編集者を加えました。とても素晴らしい方です。
- どんなときに「もうダメ…。助けが必要だ」と感じたのでしょう?
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自分の編集スキルの限界を感じたときです。プロを見つけて引き継ぐしかないと感じたんです。
- チームのメンバーはその方だけなのですか?MorganDrinksCoffeeのチームは?
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とても小さなチームです。私の撮影やその他諸々を手伝ってくれるパートナー、リモートで作業してくれる編集者、そして経営陣。私のアカウントに入れるのは私だけで、投稿もモデレーションもすべて一人で行っています。自分で何でも管理したい方なので。
- この特殊な業界では、管理に拘るというのはとても懸命なことだと思います。
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このままこの体制でやっていこう、と思ってます。いつまで続くかはわかりませんが(笑
- マーケティングの学位を取得され、他の仕事もされていますが、MorganDrinksCoffeeはいつ頃できたのでしょうか?
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私はパンデミック一年目、2020年に大学を卒業しました。当時、YouTubeやTikTok、Instagramでそれなりに成功していたもののそれをどう仕事にするか分からなくて。一時はコーヒー業界を離れ、バリスタを辞め、コンテンツ制作も止め、スタートアップ企業でマーケティングの仕事に就きました。でも、3、4ヶ月して、「自分がやりたいことはこれじゃない」と気づきました。コーヒー業界で働くことがとても恋しかったし、コンテンツを作ることも恋しかった。そんな時、今も契約しているエージェントと出会い、マネジメントをお願いすることにしました。会社は11月か12月に退職し、MorganDrinksCoffeeを仕事として始めました。コーヒー業界にフルタイムで戻り、ありがたいことにそれがうまくいっています。
- チャンネル開発について、エージェントとの取り組みについて教えてください
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沢山ありますが、いつも最善の方法を教えてくれました。スポンサーシップをどうするか、素晴らしいアドバイスをくれました。動画を流すだけでなく、様々な方向性をアドバイスしてくれました。
- YouTubeであなたの成長の原動力となったのはどういう動画ですか?
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長編では、エスプレッソマシンやコーヒーメーカーなど、器具のレビューが最も成功していますね。短編でも最近は長め、1分~1分半の日常を切り取ったような動画を出しています。短編ではこういったストーリー性のあるものがうまくいっていますし、作るのも楽しいですね。
- 最近、Fellowという会社とパートナーシップを結ばれたようですが、そちらについてお話しいただけますか?
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はい。彼らのプログラムの一つに、フェロー ドロップスというのがあって、週に一度、厳選されたコーヒーを会員にサンプリングし、販売しています。私も地元の焙煎業者からコーヒーを選び、抽出ガイドの作成を手伝いました。その他、コーヒー器具の販促も行いました。
- 世界バリスタ・チャンピオンシップについて教えてください。動画を拝見しましたが、非常に緊迫した場だったようですね。
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全米バリスタ・チャンピオンシップはバリスタ人生のNASCAR(全米で最も人気があるモータースポーツ)のようなものです。以前にも、クリエイターになる前にも、全米大会には何度も出場しているんです。バリスタのキャリアにおいて私の人生の一部となっています。今年は、アーカンソー州のオニキスコーヒーラボという会社とパートナーを組みました。実は今は、その会社でコンテンツマーケティングのストラテジストとして働いてもいます。
今年は、ボストンで行われましたが、今年のテーマは、競技とは何かをできるだけ多くの人に知ってもらうことでした。優勝できるとは思っていませんでした。全く予想外のことでした。
その後、数カ月前にメルボルンで開催されたワールド・バリスタ・チャンピオンシップにアメリカ代表として出場し、準優勝しました。コーヒー業界は、信じられないほど情熱的な人々でいっぱいの特別な場所です。本当に夢みたいな素晴らしい経験をしました。 - 準優勝とは、素晴らしいですね。これからも競技を続けていくおつもりですか?
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はい、今年も全米大会に出場する予定です。4月下旬に開催予定です。
- どのような準備をされていますか?
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コーチとテーマを決めて、脚本を書いていきます。その後、使用するコーヒーを検討し、調達先、出場時間に合わせたコーヒーの選択等を行います。コーヒーと台本が固まったら次は調合、その後実際の試飲、週に何回も、何時間も行うこともあります。とてもクリエイティブな準備期間といえます。
- それは大変ですね。コーヒーを自前で調達しなければならないとは。
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参加者はほとんど皆自分でコーヒーを調達しています。3種類まで使用することができるのですが、通常大会で使用するのは世界で最も高価なコーヒーばかりです。超レアで、実験的な品種が多いのですが、いつもとても美味しく、また選ぶのも楽しい作業です。
- 今回のチャンピオンシップに使用したコーヒーを選んだ理由は何ですか?
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過去の大会で2種類のコーヒーを使ったのですが、エスプレッソ部門と私の看板メニューに使ったのはスーダン・ルメというアラビカ種のコーヒーで、通常カフェで体験するコーヒーのほとんどはこれです。一般にアラビカ種とロブスタ種があるんですが、その2つ以外の種もあり、私が使ったのはエウゲニオイデスというコーヒーで、それ自体がひとつの種なんです。非常に古い種です。カフェインが少なく、甘みの強い品種です。つい最近、絶滅しそうになった種なのですが、実は、この種はラボ栽培で再生されたものです。
この「絶滅と再生」は、私のテーマにとって非常に重要でした。そのコーヒー(エウゲニオイデス)と、スーダン・ルメという、とてもおいしいコーヒーを選びました。おそらく、これまで飲んだコーヒーの中で最も好きなものの一つです。 - とてもクールですね。YouTubeやTikTokで存在感を示し始めてから、状況はどのように変化しましたか?何か変化があったのでしょうか?
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MorganDrinksCoffeeを仕事として扱うという意味では、何も変わっていない、と言えるように頑張っています。。YouTubeは、経済的に持続可能なプラットフォームなので、仕事としてやっていけることに毎日感謝しています。クリエイターを支えるシステムが出来上がっており、クリエイティブな活動をして、その対価を得ることができることにとても感謝しています。現時点ではYouTubeにしかできないことだと思いますし、YouTubeがいかにうまく機能しているかもわかります。YouTubeのおかげで、フルタイムで仕事ができるようになったので、とても感謝しています。