(以下は、The InformationのYouTube広告に関する記事を翻訳編集したものであり、元の記事・内容について当社が独自に制作・発信しているものではございません。)
ハリウッドの痛みがYouTubeの広告収入に?
ハリウッドで現在起こっている俳優労組ストライキがYouTubeに有利に働いている。Googleの動画ストリーミング・サービスであるYouTubeは、俳優や脚本家が抗議している間に、従来のテレビ広告にコミットすることを懸念するテレビ広告バイヤーを惹きつけているからだ。
9月から始まるNFLの試合でYouTubeがスポーツ中継に参入し、テレビでのYouTube利用が増加していることと相まって、この夏のテレビ広告費は劇的に入れ替わろうとしている。
複数の広告代理店のトップがThe Informationに語ったところによると、今秋のYouTubeへの広告出稿は、昨年よりも少なくとも10%から20%増えそうだ。一方、従来のテレビネットワークへの広告支出は15%減少すると、複数の広告バイヤー幹部が語った。
まとめ
- ストライキで新番組が停滞するなか、テレビ広告バイヤーが秋の支出を見直している
- YouTubeの広告営業チームが広告費獲得のチャンスをつかむ
- 一部のバイヤーはYouTubeのNFLサンデーチケット広告価格に難色を示す
視聴時間で世界を席巻するデジタル動画プラットフォームYouTubeは、年間700億ドル近いテレビ広告市場に10年以上前から本気で対抗しようとしてきた。YouTubeをはじめとする動画ストリーミング・サービスの視聴時間が増えているにもかかわらず、従来のテレビ広告市場は比較的堅調に推移してきた。その理由のひとつは、テレビネットワークがスポーツ中継やその他の大きなイベント番組に対し、高い料金を請求できるからである。
YouTubeは近年、テレビでのYouTube動画の消費拡大に助けられ、トップクラスのマーケティング担当者や広告バイヤーを獲得し、すでにテレビ広告市場に進出していた。5月初旬の時点で、ユーチューブは70億ドル以上の広告費を前倒しで計上する見込みで、今後数四半期にわたって収益に貢献することになる。
また、MrBeastのようなクリエイターが質の高い動画を配信しているおかげで、YouTubeのコンテンツを好む広告主も増えている。YouTubeのクリエイターは、HBOやFXの高額なテレビ番組のような予算はないかもしれないが、従来のテレビを見ない若い視聴者を惹きつけている。
「10年前のYouTubeとテレビを比べたたら、(コンテンツの質の)差は非常に大きかったでしょう」と、世界最大の広告買い付け代理店GroupMの元幹部ヴィーザー氏は語る。「品質に対する認識の差は劇的に縮まりました。」
同時に、YouTubeは広告をよりテレビに近いものに変えつつある。5月には、TVアプリにスキップ不可の30秒広告を導入し、広告主は従来のTVチャンネルと同じCMを流すことができるようになった。広告バイヤーによると、これは広告主にとって魅力的なオプションであることが証明されている。ある調査会社によると、加入者数は2023年末までに750万人に達するという。
しかし、ハリウッドのストライキによって、YouTubeは、Disney、コムキャスト傘下のNBCユニバーサル、パラマウント・グローバルなど、通常は広告費を巡って競合する伝統的なテレビ大手よりも、一時的とはいえ明らかに優位に立つことになった。スストライキは、売り手と買い手が秋のテレビCMに何十億ドルも費やすことについて話し合う、夏のテレビアップフロント市場の交渉と重なった。
5月から続いている全米脚本家組合(WGA)のストライキと、7月の全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキにより、テレビ局はこの秋シーズンの新作・既存脚本番組の放映が難しくなっている。新鮮な脚本ドラマやコメディは、時間枠を埋める安っぽいリアリティ番組よりも大きなスポンサーを惹きつけることができる、と広告幹部は言う。
YouTubeは全米映画テレビ製作者協会(AMPTP)に加盟しておらず、SAG-AFTRAやWGAの参加を必要とする映画やテレビ番組に資金を提供していないため、ストライキによる打撃を受けることはない。
サンデーチケット
年間20億ドル以上を投じてNFLサンデーチケット(全試合視聴可能なパッケージの)の独占権を獲得したおかげで、YouTubeは米国内で最も人気のあるテレビ番組NFL内で初めてタイムCMを販売できるようになった。YouTubeのサンデーチケット放送は、NFLのレギュラーシーズンが開幕する9月から開始される。
しかし、現地で試合を放送するCBSとFoxの放送ネットワークのライブフィードをストリーミングしているため、YouTubeはサンデーチケットサービスに表示される広告の一部しか販売できない。つまり、試合中に放映される広告のほとんどはCBSやFoxが販売しており、YouTubeが販売するのは、従来のテレビ放送のローカル広告に代わるタイムCMなのだ。
広告主向けにサンデーチケットのパッケージを充実させるため、YouTubeはNFLの試合前のハイライトやクリエイターが作成したオリジナル映像とともに放映される広告枠を提供している。
それでも、サンデーチケットの広告パッケージに1000インプレッションあたり(CPM)45ドル以上の課金をしており、これは従来のテレビのスポーツ広告の価格と同水準だと広告幹部は語る。
YouTubeの広報担当者は、現在進行中の広告主との交渉についてはコメントを避けたが、同プラットフォームはNFLのサンデーチケットについて「多くの業種の広告主から幅広い関心が寄せられている」と述べた。
アナリストや広告業界の幹部は、YouTubeがこのサービスで数年間赤字続きになると予想している。YouTubeのNFLサンデーチケットパッケージは、449ドルからの単体契約とYouTube TVへのアドオン(追加契約)の両方を提供しているが、契約加入者数は不明だ。また、ベライゾンやフロンティアを含む一部のブロードバンド・インターネット・プロバイダーや無線電話プロバイダーと提携し、サンデーチケットの割引も提供している。
出典:The Information Hollywood’s Pain Is YouTube’s Advertising Gain