(以下はWorld Economic Forumに寄稿されたコミュニティ・エコノミーに関する記事を要約したものであり、元の記事・内容については当社が独自に制作・発信しているものではございません。)
ポイント
- オンラインでの交流方法は、クリエイター主導のコンテンツからコミュニティ・エコノミーへと移行しつつある
- ブランドはコミュニティの担い手となる機会を得た
- ブランドは、対話を尊重する安全な空間を作り、お客様のデータを保護、エンゲージメントを促進することが必要
クリエイター主導のコンテンツから、コミュニティ主導のつながりへ
私たちがオンラインで交流する方法は、クリエイター主導のコンテンツ重視から、よりコミュニティ主導のつながりへと、大きな変化を遂げつつある。Web3はインターネットの次の世代で、ユーザーがコンテンツや経験の最終的な構築者となり、価値はトークン、分散型台帳、暗号通貨、コンピューティングパワーの形で分散化されるようになる。
Web3は、より公平でオープンなWeb、つまり「ユーザー」がまず人間であり、権利と尊厳を持つWebを提供する。Web3は、プライバシーの欠如や無礼な言動の蔓延など、オンライン生活のよりネガティブな側面を解決する可能性を持つ。また、分散化、民主化、そして自由なアクセスによって、新たなコミュニティ・エコノミーが生まれるだろう。この新しいオンライン環境において、ブランドはコミュニティの構築者となるチャンスを得ている。
クリエイターモデルからコミュニティ・エコノミーへ
現在のインターネットでは、クリエイター・エコノミーが主流となっている。このモデルでは、一個人が他よりも優位に立ち、会話の決定権を持つ。コミュニケーションは、クリエイターからフォロワーへと一方向に流れ、クリエイターは、集団の一員としてではなく、ファンダムを支配する有名人として振る舞う。このようなシステムでは、少数のビッグテック・プラットフォームに権力が集中してしまう。
これに対し、コミュニティ・エコノミーは、Web3の分散型理念から生まれたものだ。 このモデルでは、クリエイター個人ではなく、コミュニティの集合体に価値があるため、誰もが平等に会話に加わることができる。
各コミュニティのパワーと影響力は、参加者の数によって決まる。サイトの広告を減らすためにお金を払うか、アプリに個人情報を登録して限定特典やロイヤルティプログラムを利用するかなど、ブランドやプラットフォームとの関わり方を個人が自由に選択できる。
コミュニティ・エコノミーという新興分野では、人々、広告主、パブリッシャー、ブランドといった、すべての構成員が対等な立場にある。ブランドとメディアは、つながりの原動力または出発点として機能し、自分たちの周りに構築されるコミュニティの育成に積極的な役割を果たすことができる。
以下は、健全なコミュニティを構築、活性化させるため、ブランドが守るべき3つの要素である。
1. 誠実な対話のためのセーフティネットの構築
記事、動画、ソーシャル投稿にコメントする際に、皆礼儀正しい振る舞いを心がけるべきである。
企業及びブランドは顧客やフォロワーの信頼を得るべく、質の高い会話を行うための安全な場所を作る必要がある。自らのウェブサイト、ソーシャルメディア、コメント欄において、模範となる行動をとり、ユーザーが作成したコンテンツを監視することで、品位を維持することが大切だ。
2. ユーザー・データを守るためのシステム構築
ユーザーが自分のデータに対して所有権を持つ必要がある。現在のシステムでは、ソーシャルメディア大手が利益のためにデータを使用しているが、コミュニティ・エコノミーでは、ユーザーがアクセスや操作の対価を決定することが可能。企業やブランドはこのような自由をユーザーに与えることでユーザーとの信頼関係を築き、結果、人々がサイトに何度も訪れるようになり、活発なコミュニティの基礎が出来ていく。
これは、Netflixのように、ユーザーが購読料を広告の有無で決めるようなことかもしれない。あるいは、広告を見たユーザーにアプリ内コインで報酬を与えるBraveのような例もある。
3. 多様なエンゲージメント実現の場
メディアやブランドは、コンテンツや商品制作に焦点を当てた考え方から、コミュニティの形成・育成に意識を変える必要がある。ある作家が好きだからといって出版社のサイトを訪れたり、あるブランドが好きだからといって何度も繰り返し訪れたりする訳では無い。それは、共通の価値観や興味に基づいた、もっとスケールの大きなものであり、コミュニティとのつながりやブランドを信頼することだ。
スポーツリーグであれ、医療用化粧品会社であれ、ブランドをエンゲージメントの目的地にするチャンスはある。
自社のウェブサイトやアプリ上にメタバース空間を作り、そこを人々が集い、つながる交流の場にする。
実店舗とオンラインでの顧客の体験を融合させる、クリエイティブな活動を展開することもできる。
例えば、NBAがソーシャルメディアから話題の中心を奪い返し、ファンをNBAのウェブサイトに呼びこみ、交流を促進する。カスタムアバターを提供したり、バーチャルゲームを開催して限定機能を展開したり、NBAのウェブサイト上でプロフィールやネットワークを構築したファンに対して報酬プログラムを展開するのもよいだろう。
私はこれを「持ち込み型ウェブ」と呼ぶが、この方法を採用するブランドは、分散型コミュニティ・エコノミー構築の最前線に立てるだろうと考えている。
コミュニティ・エコノミー・モデルは、権威よりも信頼に基づく、オンライン・エンゲージメントの新たな幕開けとなるだろう。今こそ、ブランドは未来への展望を描き始めるべき時だ。
出所:Tiffany Xingyu Wang氏寄稿:
World Economy Forum “FUTURE OF MEDIA, ENTERTAINMENT AND SPORT 3 ways your business can build a community economy”