2026年9月24日、OpenAIの動画生成モデル「Sora」のAPI提供が終了した。OpenAIヘルプセンターの案内によれば、Soraのウェブ版とアプリは4月26日にすでに終了しており、この日でAPI経由のsora-2系モデルも止まった。後継の動画モデルは、9月29日のDevDayでも発表されていない。その2日前の9月22日(米国時間)、会員制ファンプラットフォームPatreonの共同創業者で元CTOのSam Yam氏が、OpenAIで「Creator Product」を率いると自身のXで表明し、元Patreonのプロダクト責任者とエンジニアリング責任者も同行すると明かした。
要点は3つに絞れる。ひとつ、OpenAIは「動画を作るAI」を一度畳み、その足で「クリエイターがファンから稼ぐ仕組み」を作ってきた人材を迎えた。ふたつ、Yam氏は9月29日のOpenAI DevDayに注目してほしいと予告していたが、OpenAIが当日公開した公式まとめ(DevDay 2026 Recap)には、20件以上の発表の中にクリエイター向け製品の記載はなかった(9月30日時点)。人事についても、OpenAIとPatreonの公式声明は本稿執筆時点で見つかっていない。みっつ、もしChatGPTの利用者基盤の上にファンビジネスの機能が乗るなら、Patreonや国内の各サービスと同じ土俵にAI大手が立つことになる。DevDayでは、ChatGPTを外部の開発者が自分の体験を載せられる「共有の場」として開放する方針も示された。クリエイター事務所やMCN、自分でファンビジネスを回すクリエイターが、DevDayを経た今、頭に入れておきたい論点を整理する。
何が起きたか──Sora APIの終了と、元Patreon幹部3人のOpenAI入り
まず時系列を、確定していることと未確定のことに分けて押さえる。OpenAIの開発者向けモデル廃止予定ページには、2026年3月24日にVideos APIとSora 2系モデルの利用者へ廃止を通知し、9月24日にAPIから削除すると記載されている。対象はsora-2、sora-2-proと各日付付きスナップショットで、「推奨される移行先」の欄はすべて空欄、つまりOpenAI自身の後継モデルは案内されていない。ヘルプセンターの記事は、終了後にユーザーが作った動画データを最終エクスポート期間の経過後に完全削除するとし、早めのエクスポートを勧めている。
| 日付 | 出来事 | 情報の性質 |
|---|---|---|
| 2026年3月24日 | OpenAIがXでSora終了を告知。同日、Videos APIとSora 2系モデルの廃止を開発者に通知 | OpenAI公式(X投稿・廃止予定ページ) |
| 2026年4月26日 | Soraのウェブ版・アプリが提供終了 | OpenAI公式(ヘルプセンター) |
| 2026年9月22日(米国時間) | Sam Yam氏がOpenAIで「Creator Product」を率いるとXで表明。元Patreonのプロダクト責任者Drew Rowny氏、エンジニアリング責任者Shannon Ma氏も同行 | 本人のX投稿(OpenAI・Patreonの公式声明は未確認) |
| 2026年9月23日 | Tubefilter、Music Allyなど海外メディアが報道 | 報道 |
| 2026年9月24日 | Sora API(sora-2系)が提供終了 |
OpenAI公式 |
| 2026年9月29日(米国時間) | OpenAI DevDay 2026(サンフランシスコ)。常時稼働型エージェント「dots」、GPT-6.1 Sol、ChatGPT内に外部の体験を載せる「plugin extensions」など20件以上を発表。クリエイター向け製品、動画生成の後継は発表なし | OpenAI公式まとめ(DevDay 2026 Recap) |
終了の理由は、公式ヘルプにも廃止予定ページにも書かれていない。3月24日にOpenAIがXに投稿した告知文は「Soraにお別れを言う」と述べ、作品を作り共有してくれた人々への感謝と「この知らせが残念なものだと分かっている」という一文で構成されており、米MacRumorsは理由の説明がなかったと報じた。理由に触れたのはSam Altman CEO本人で、米Varietyが4月2日に伝えたポッドキャスト「Mostly Human」での発言によれば、判断は資源配分の問題で、「計算資源と製品開発の能力を、次世代の自動化された研究者や企業(automated researchers and companies)に集中させる」必要があったという。
人事のほうは、一次情報がYam氏本人のX投稿に限られる。投稿では「Patreonを始めてから13年以上を経て、OpenAIでCreator Productを率いる」と述べ、Patreonの(今は元)プロダクト責任者Drew Rowny氏とエンジニアリング責任者Shannon Ma氏が一緒に移ると書いている。米国のクリエイター経済専門メディアTubefilterは9月23日にこれを報じ、新設のCreator Product部門を率いると位置づけた。英国の音楽業界メディアMusic Allyも同日、Yam氏がフォロワーに「来週のOpenAI DevDayに注目してほしい」と続けて投稿したことを伝えている。OpenAIからの発表文、Patreonからのコメントは、いずれも本稿執筆時点で見つかっていない。9月29日のDevDay当日にOpenAIが公開した公式まとめ(DevDay 2026 Recap)にも、Creator Productやクリエイター向け製品の記載はなかった。発表の中心は、利用者の代わりに常時働くエージェント「dots」や新モデル「GPT-6.1 Sol」、開発者がChatGPTの中に自分の体験を載せられる「plugin extensions」などで、OpenAIはChatGPTを「週間12億人の利用者」に向けた共有の場として開放すると説明している(英語原文は“our collective 1.2B weekly users”)。
Patreonという会社の重みを、Patreon公式の会社概要ページの数字で確認しておく。同ページは、30万以上のクリエイターが活動し、毎月1,000万人以上のファンが有料メンバーシップを支払い、無料メンバーシップは1億件を超え、2013年以降にファンからクリエイターへ送られた金額は累計100億ドル以上、としている(いずれも公式ページの現時点の表記で、集計日は明示されていない)。その設計を創業から13年担ってきた人物が、プロダクトとエンジニアリングの責任者を連れてOpenAIに移る。これが今回のニュースの実体だ。
「作るAI」から「クリエイターの収益化」へ──OpenAIの軸の動きをどう読むか
Soraの終了とYam氏の採用は、別々に起きた出来事として読むこともできる。ただ、2日違いで並んだ2つの事実は、OpenAIがクリエイター領域で「何を自社でやり、何をやらないか」を組み替えている途中だと読むのが自然だろう。以下は筆者の読み方であり、OpenAIが説明したものではない点を先に断っておく。
ひとつ目の読み方は、動画生成そのものはもはやOpenAIにとって「勝ち筋」ではなくなった、というものだ。動画生成AIはGoogle Veoをはじめ複数の大手・専業各社が競い、機能の差は縮まっている。当メディアでもVeo 3.1の無料開放を取り上げたが、生成モデル単体で差別化し続けるには、膨大な計算資源と権利処理のコストがかかる。Altman氏自身が「計算資源を次世代の自動化された研究者に集中させる」と説明した点も、この読み方と矛盾しない。OpenAIは2026年に入ってからも、GPT-6 AstraのようにPCを操作して制作現場に入っていくエージェント型の製品に力を注いでおり、動画生成モデルを自社で抱え続ける優先度が下がったとしても不思議ではない。DevDay当日には、動画・画像生成のHiggsfieldが、dotsの上で常時働く「クリエイティブ班」を発表した(Higgsfield公式Xより。OpenAIの公式まとめに同社の名前はない)。動画生成は専業各社に任せ、OpenAIはその作業を動かす土台を押さえる、という分担が見え始めている。
ふたつ目の読み方は、OpenAIがクリエイターとの関係を「ツールの提供者」から「稼ぐ場の提供者」へ広げようとしている、というものだ。Patreonのビジネスは、クリエイターがファンから直接、月額で支援を受け、その手数料を得るモデルである。ChatGPTのような巨大な利用者基盤を持つサービスが、クリエイターとファンをつなぐ機能や決済の仕組みを持てば、生成AIの利用料とは別の収益源になる。Tubefilterは、米Comscoreの調査でChatGPTが米国内の利用シェアで競合に押されているとの報告を引き、クリエイターとの関係強化はその対策でもあると位置づけた。これは同メディアの見立てであり、OpenAI自身の説明ではない。
三つ目は、Yam氏本人の言葉に手がかりを求める読み方だ。Music Allyが伝えた投稿で、Yam氏は「人間の創造性が最も重要だと信じている」と述べている。生成AIがクリエイターの仕事を奪うという批判が続く中で、Patreonの創業者がOpenAIに入り、その立場から「人の創造性」を掲げた意味は小さくない。AIが作品を作る側ではなく、人が作った作品がファンに届き、対価が戻る側の仕組みを作る、と読むのが投稿の文脈には沿う。ただし、9月29日のDevDayではクリエイター向け製品そのものは示されず、3つの読み方はいずれも確かめられないまま残った。ひとつ目の「動画生成を自社で抱えない」は、Soraの後継が発表されなかったことと矛盾しない。ふたつ目の「稼ぐ場の提供者へ」は、製品こそ出なかったが、ChatGPTを外部の体験を載せる共有の場として開放する方針が示されたことで、土台づくりが先に進んでいるとも読める。三つ目については、判断材料はYam氏の投稿のままである。
ファンビジネスの競争環境はどう変わり得るか
クリエイターがファンから直接収益を得る仕組みは、すでに多くのサービスが提供している。海外ではPatreonのほか、YouTubeのチャンネルメンバーシップや各SNSのサブスクリプション機能があり、日本国内ではpixivFANBOX、Fantia、FANMEなど、月額支援やデジタルコンテンツ販売を軸にしたサービスが並ぶ。それぞれ得意なジャンルや手数料、決済手段、ファンとの接点の設計が異なり、クリエイターは複数を併用することも多い。ここにAI大手が入ってきた場合、何が変わり得るのか。
変わり得る点の第一は「入口」だ。既存のファンサービスは、クリエイターが自分のSNSからファンを誘導して初めて成立する。一方、日常的に大勢が使う対話型AIがクリエイターとファンをつなぐ機能を持てば、ファンがクリエイターを見つける入口そのものが変わる可能性がある。第二は「作業の肩代わり」だ。ファン向けの限定コンテンツの企画、投稿文の下書き、問い合わせへの返答、支援者データの分析といった運用作業は、生成AIが最も得意とする領域でもある。Patreon出身のチームがOpenAIで作るものが、収益化の場なのか、既存サービスと連携する運用支援ツールなのか、あるいはその両方なのかで、競争環境の変わり方はまったく違う。
一方で、変わりにくい点もある。ファンビジネスの核心は、クリエイターとファンの信頼関係と、その関係を支える決済・権利・コミュニティ運営の地味な実務にある。Patreonが13年かけて積み上げてきたのはまさにその部分であり、Yam氏らが移ったからといって、OpenAIの製品が一夜でそれを再現できるわけではない。国内サービスには、日本の決済習慣、同人・二次創作文化への理解、日本語でのサポートといった強みがあり、海外のAI大手がすぐに置き換えられる領域ではない。「AI大手が来る」と聞いて即座に乗り換え先を探す必要はない。9月29日のDevDayではクリエイター向け製品は発表されなかったので、実際の製品と条件が示されてから判断すればよい。
事務所・クリエイターが今から準備すべき3つのこと
クリエイター向け製品の発表を待つ間にも、進めておけることはある。むしろ、発表内容がどうであれ有効な準備を先に済ませておくほうが、発表されたときの判断が速くなる。3つに絞って整理する。
第一に、ファンデータを自社で持つことだ。どのプラットフォームでファンビジネスを展開していても、支援者の連絡先、支援履歴、反応の傾向といったデータが自社の手元になければ、プラットフォームの方針変更や終了のたびに関係をゼロから作り直すことになる。今回のSora終了は、AI大手であっても製品を1年足らずで畳み、データは期限後に削除すると案内する、という現実を示した。新しいサービスが魅力的に見えても、ファンとの接点を1社に預けきりにしない設計は、事務所がクリエイターに提供できる最も基本的な価値である。
第二に、収益源の分散だ。広告収益、企業とのタイアップ、ファンからの直接支援、グッズやデジタルコンテンツの販売は、それぞれ景気やプラットフォームの都合に左右される度合いが異なる。ファンからの直接支援は、フォロワー数に比べて金額は小さくても、プラットフォームのアルゴリズム変更に最も影響されにくい収益源だ。AI大手の参入で選択肢が増えるなら歓迎しつつ、既存のサービスでの支援者との関係はそのまま育て続ける。運用の手間が増える分は、当メディアでクリエイターがAIエージェントに業務を委ねる設計として整理した方法で補える部分が大きい。
第三に、Soraを制作フローに組み込んでいた場合の移行だ。アプリ版は4月に終わっているため多くの現場は移行済みだろうが、APIをツールに組み込んでいた場合は9月24日以降動かなくなっている。OpenAIは移行先を案内していないので、選定は各社の判断になる。動画生成AIの選択肢については、YouTube ShortsのAIアバター機能の回や前述のVeo 3.1の回で扱っているので、本稿では深入りしない。ここで確認しておきたいのは、Soraで作った動画のエクスポートを済ませたか、その動画の権利や利用条件をどう整理しているか、の2点だけである。
クリエイター向け製品が発表されたら「ここが分かれば判断できる」チェックリスト
OpenAI DevDay 2026は、9月29日(火)にサンフランシスコのFort Masonで開かれる。公式ページによると基調講演は午前10時(太平洋時間)にSam Altman氏が登壇し、無料でライブ配信される。日本時間では9月30日の午前2時にあたる。DevDayの公式ページはクリエイター向け製品について何も触れておらず、手がかりはYam氏の投稿だけだ。だからこそ、当日は「発表があったかどうか」ではなく、「事務所やクリエイターの判断に必要な項目が明らかになったか」で見るのがよい。以下は、その確認項目である。
| 確認項目 | 分かれば何が判断できるか | DevDay後(9/30時点) |
|---|---|---|
| 製品の種類 | ファンから収益を得る「場」なのか、既存サービスと連携する「運用支援ツール」なのか。前者なら競合、後者なら併用の検討になる | 発表なし |
| 手数料・収益分配 | Patreonや国内サービスと比べたときの取り分。決済手数料を含む実質の料率 | 発表なし |
| ファンデータの扱い | 支援者の連絡先や履歴をクリエイター側が持ち出せるか。エクスポートの有無と範囲 | 発表なし |
| 提供地域・対応言語・決済 | 日本のクリエイターと日本のファンが使えるか。円決済や国内の決済手段への対応 | 発表なし |
| 提供時期と「早期アクセス」の条件 | Yam氏は一部クリエイターへの早期提供を示唆している。対象の選ばれ方と、事務所として応募できるか | 発表なし(本人投稿のみ) |
| 生成AIとの関係 | クリエイターの作品や名前・声が学習や生成に使われる条件。権利者側のコントロールと収益分配の有無 | 発表なし |
| 動画生成の後継 | Soraに代わる動画モデルや提携先が示されるか。示されなければ移行先は他社で確定 | 発表なし(廃止ページの移行先も空欄のまま) |
この表の項目が半分でも埋まれば、事務所は「様子見」「早期アクセスに応募」「既存サービスの運用を強化」のどれかを選べる。逆に、基調講演で言及がなかった場合も、それ自体が判断材料になる。DevDayを経た9月30日時点で、この表の項目はひとつも埋まらなかった。Yam氏の投稿から1週間で製品を披露するとは考えにくいと見ていたが、実際には公式まとめで言及そのものがなかった。今後、Yam氏やOpenAIから製品や早期アクセスの案内が出た時点で、この表で確かめてほしい。
Soraが止まった日に、Patreonを作った人たちがOpenAIで働き始める。この符合を「AIが作品を作る時代の終わり」と読むのは早計だが、少なくともAI大手が、作品を作る側から、作品を作る人とファンの間に立つ側へ関心を広げているのは確かだろう。ファンビジネスの競争が変わるかどうかは、DevDayでは決まらなかった。実際の製品が示される今後の数カ月で決まる。準備すべきことは、どんな発表になっても変わらない。ファンとの関係を自分の手元に持ち、収益の柱を一本に頼らないことだ。
本記事は、株式会社TORIHADAが運営するクリエイターエコノミー専門メディア「CREATORS POST」がお届けしました。最新のマーケティング・クリエイター動向を、実務目線で発信しています。
この記事はAIを活用して書いています。



