「二次利用込み」のPR案件、契約で決めるべき7項目──期間・媒体・広告配信・改変・PR表示・削除・再交渉を、権利の「束」から整理する

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インフルエンサーのPR投稿を、広告主が自社SNSに転載し、広告として配信し、LPや店頭にも使う。いわゆる「二次利用込み」の案件は、いまや標準的な発注形態になった。ところが契約書を開くと、「甲は本投稿を二次利用できる」という一行しかない、という例は珍しくない。揉めるのは投稿の当日ではなく、半年後に想定していなかった場所で自分の投稿を見つけたときだ。

要点は3つある。ひとつ、投稿の権利は一枚ではなく「束」であり、二次利用とは束のどの糸を、どこまで渡すかの話である。ふたつ、決めるべき項目は期間・媒体・広告利用・改変・クレジットとPR表示・削除・再交渉の7つに整理できる。みっつ、著作権とは別に、肖像(パブリシティ)・音源・AI加工の3つは、黙っていると契約に含まれない。この記事では、クリエイター事務所やMCNの案件担当と、ブランドのPR・法務担当の双方が同じ表を見ながら条項を組めるように、それぞれの落とし穴を並べて整理する。

目次

なぜ「二次利用OK」の一行では足りないのか──権利は「束」で渡すもの

まず、二次利用という言葉が何を指しているのかをほどいておく必要がある。文化庁が公開している著作権テキスト(令和6年度版)を開くと、著作者の権利は、複製権(第21条)・公衆送信権(第23条)・翻訳権や翻案権(第27条)といった財産権としての「著作権」と、公表権・氏名表示権(第19条)・同一性保持権(第20条)からなる「著作者人格権」に分かれている。PR動画を自社SNSに転載するのは複製と公衆送信、字幕を入れて短く切るのは改変や翻案、名前を外して使うのは氏名表示の問題。「二次利用」と一言でまとめられている行為は、実は束の別々の糸に触れている。

しかも、著作者人格権は譲渡できない(第59条)。財産権としての著作権は契約で譲渡や利用許諾ができるが(第61条・第63条)、「意に反する改変をされない」「名前を出すか出さないかを決める」権利は、契約書に何を書いてもクリエイター本人に残る。実務で「著作者人格権を行使しない」という条項が入るのはこのためだが、文化庁のテキスト自身が、この条項を受け入れたクリエイター側には、改変や氏名の非表示に異議を述べられなくなる不利益が生じると注意を促している。事務所側はこの一文の重さを、広告主側はこの一文がなければ自由な改変は前提にできないことを、それぞれ知っておきたい。

同じテキストは、著作権を譲渡で受ける場合の落とし穴も書いている。翻案権(第27条)と二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(第28条)は、契約で特掲されていなければ譲渡した側に留保されたものと推定される(第61条第2項)。「全部譲渡してもらった」つもりでも、切り貼りして別バージョンを作る権利は相手に残っていた、という食い違いは条文上あり得る。二次利用込みの案件が揉めるのは、当事者の善意が足りないからではなく、「一行」で束を渡そうとする書き方そのものに原因がある。

権利と契約の認識のずれは、PR案件だけの話でもない。2026年に入っても、事務所とタレントの間で「卒業」か「契約解除」かという扱いそのものが食い違い、法的措置の検討にまで至った例がVTuber業界で報じられている。案件単位の二次利用も構造は同じで、書いていないことは「合意していない」と考えるのが、双方にとって安全側の読み方になる。

7項目の全体像──何を、どちらが、どう決めるか

二次利用の条項を設計するときは、7つの項目を1枚の表にして、事務所側と広告主側がそれぞれ何を失いやすいかを見比べるのが早い。どちらかの側だけが得をする書き方は、相手が案件を受けなくなるか、後で揉めるかのどちらかに行き着く。逆に、両側の落とし穴が同じ表に並んでいれば、交渉は「どちらが譲るか」ではなく「どの空欄を埋めるか」の作業になる。以下の表が本記事の骨格で、次の3つの章でひとつずつ掘り下げる。

項目 契約で決めること 事務所側の落とし穴 広告主側の落とし穴
①期間 起算点と終了日、延長の手順 「永久」「無期限」を安易に受ける 期限切れの素材が広告や店頭に残る
②媒体・範囲 自社SNS/広告配信/LP/店頭・印刷/海外・翻訳版を列挙 「自社媒体」が広告配信まで含むと解釈される グループ会社・海外拠点・小売店頭が抜ける
③広告利用 クリエイター名義配信(Spark Ads等)と広告主名義配信の区別、認証期間、予算・地域の上限 名義配信の期間と停止手順が決まっていない 認証期限で配信が止まる/認証取り消しに備えがない
④改変 比率変更・尺短縮・字幕・翻訳・静止画切り出し・AI加工の可否と確認手順 「必要な範囲で改変可」の白紙委任 人格権不行使の合意がなく、改変が前提にできない
⑤クレジット・PR表示 名義表記の要否と形式、PR表示を転載・加工後も維持すること 名前が消えて自分の実績にならない 転載時にPR表記が落ち、表示規制の論点になる
⑥削除・掲載終了 終了時の削除範囲と期限、クリエイター側事情による削除要請、炎上時の停止手順 削除を求める入口が契約にない 印刷物など回収できない媒体まで削除を約束する
⑦再交渉・追加報酬 延長・媒体追加・成果連動の考え方と申し出期限 「別途協議」だけで基準がない 延長のたびに一から合意し直す運用負荷

①期間・②媒体・③広告利用──「どこで、いつまで、誰の名前で」

期間で最も避けたいのは「永久」だ。PR投稿の報酬は、投稿時点でのクリエイターの影響力を前提に決まる。ところが永久の許諾は、その後の活動休止・方針転換・所属変更といった変化を一切織り込まず、価値が上がっても下がっても同じ条件で使われ続ける。広告主側にとっても、期限のない素材は棚卸しが効かず、ブランドのトーンから外れた古い投稿が広告や店頭に残る温床になる。起算点を「投稿日」「契約日」「最初の二次利用日」のどれにするかを明記し、期限は月数で区切って、延長は⑦の手順に委ねる形が扱いやすい。

媒体・範囲は、「自社媒体」という言葉の解釈が双方で一致しないことが問題の中心にある。広告主が思い浮かべるのは自社のSNSアカウントとウェブサイトだが、現場では広告配信、LP、店頭POPや商品同梱の印刷物、プレスリリース、営業資料、グループ会社や海外拠点のアカウント、翻訳版へと広がっていく。契約では媒体を列挙し、列挙にないものは都度合意と書く。特に印刷物と海外展開は、後述する削除が物理的に効かない媒体なので、事務所側は許諾する前に「これは消せない」と意識して判断したい。

③広告利用は、いまの二次利用で最も価値が高く、最も曖昧な項目だ。型は2つある。ひとつは広告主名義で、投稿素材を広告主の広告アカウントから配信する型。もうひとつはクリエイター名義で、TikTokのSpark AdsやMetaのパートナーシップ広告のように、クリエイターの投稿そのものをクリエイターのアカウント名義で広告配信する型だ。後者は投稿主の許可を前提に動く仕組みで、TikTokの公式ヘルプは、認証コードの有効期間をキャンペーンに合わせて設定でき、Spark Adsとして認証中の動画は認証を解除しないと元のアカウントから削除できないと説明している。Content Suite経由の認証依頼は既定で365日とされている。

ここで契約と仕組みのずれが生まれる。契約上の二次利用期間が6カ月でも、認証コードが30日で切れれば配信は止まり、逆に認証を365日で出してしまえば、契約終了後も配信できる状態が残る。だから契約では、クリエイター名義配信を含むのか、含むなら認証期間を契約期間に揃えること、クリエイター側が投稿を非公開・削除したいときに認証解除をどう手順化するか、広告予算の上限や配信地域を決めるのか、を書き分ける。Spark Adsの仕組みそのものはTikTok Spark Ads完全ガイドで整理しているので、条項を書く前に一読しておくと認証周りの用語が揃う。

④改変・⑤クレジットとPR表示──「切っていいか、名前を消していいか、PRの文字を残すか」

改変は、広告主側が最も「当然できる」と思い込みやすく、事務所側が最も後から気づく項目だ。縦動画を横にトリミングする、60秒を15秒に短縮する、字幕や翻訳を入れる、静止画を切り出してバナーにする、AIで背景や音声を差し替える。いずれも同一性保持権や翻案権に触れる行為で、前章で見たとおり人格権は譲渡できない。「必要な範囲で改変できる」という白紙委任は避け、たとえば「比率変更・尺の短縮・字幕付与は事前確認なしで可、発言の順序変更や一部の切り出し、AIによる加工は事前確認」というように段階を分けて書くと、双方の運用が楽になる。

改変には表示規制の側面もある。消費者庁のステルスマーケティング規制の運用基準は、事業者が第三者の投稿を自社サイトで使う場面について、投稿に良い点と悪い点の両方が書かれているのに一方だけを取り上げるような変更を加えず、そのまま引用する場合を、事業者の表示とされない例として挙げている。PR投稿はもとから事業者の表示だが、切り出し編集で意味合いが変わるなら、権利の問題に加えて表示の問題も生じ得る。「都合のいい部分だけ切る」は、契約以前に規制の観点でも慎重に扱いたい。

クレジットは、氏名表示権により、名前を出すか出さないかを著作者が決める権利であることが出発点になる。事務所側にとってPR投稿の二次利用は、クリエイターの実績としてポートフォリオに残るかどうかにも関わる。アカウント名・ハンドル・実名のどれで表記するか、店頭POPのような物理媒体で省略を認めるか、省略する場合は事前に通知するか、といった形式まで決めておくと、後から「名前がどこにもない」という不満を防げる。

PR表示は、二次利用で最も落ちやすい要素だ。消費者庁によれば、ステルスマーケティング規制は2023年10月1日に施行された景品表示法第5条第3号の告示に基づく規制で、対象は商品・サービスを供給する事業者であり、依頼を受けたインフルエンサー本人は規制の対象ではない。つまり、転載や広告配信のときにPR表記が落ちた場合に問われるのは広告主側だ。運用基準は、事業者自身のSNSアカウントを通じた表示は事業者の表示であることが社会通念上明らかだとする一方、動画で広告である旨を一般消費者が認識できないほど短い時間しか表示しない、大量のハッシュタグの中に埋もれさせる、といった例を不明瞭な表示として挙げている。

PR表記が落ちやすいのは、クリエイター名義で広告配信するときと、テロップを作り直したときだ。契約では「PR表示はクリエイターの元投稿の表記を維持し、加工後も同等の明瞭さで維持する」と一文入れておく。業界団体の基準も参考になる。一般社団法人クチコミマーケティング協会のWOMJガイドライン(2026年1月7日改定版)は、関係性の明示としてマーケティング主体の名称と関係の内容の両方を示すことを求め、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)の「ネイティブ広告に関する推奨規定」(2015年3月)も、広告表記と広告主体者の明示を推奨事項として定めている。

なお、薬機法や景品表示法が定める表現そのものの規制(何を書いてはいけないか)は、権利と契約の話とは別の論点なので本記事では扱わない。一方、UGCやアンバサダー投稿を広告主側の面に載せるときの「見せ方」は本記事の⑤と地続きで、Instagramのタグ付け投稿をグリッドに置く機能の記事でも触れている。

⑥削除・掲載終了・⑦再交渉──「終わらせ方」と「延ばし方」を最初に書く

契約の終わらせ方は、始め方より書きにくい。だが二次利用で本当に揉めるのはここだ。契約終了時に何をどこまで消すかは、媒体ごとに現実が違う。自社SNSの転載やLPは削除できるが、配信済み広告の記録、印刷物、店頭は物理的に回収できない。だから「終了後○日以内にSNS・ウェブ上の掲載を削除、印刷物は在庫の消尽まで」のように媒体別に書き、広告主側は消せないものまで削除を約束しないようにする。前述のとおり、Spark Adsとして認証中の動画は削除できないので、認証解除と投稿削除の順番も手順として書いておく。

もうひとつ入口を作っておきたいのが、クリエイター側の事情による削除要請だ。活動休止、方針転換、所属変更、健康上の理由。契約期間中であっても申し出があれば一定期間内に掲載を終了する、という条項がないと、事務所側は「お願い」以外の手段を持たない。逆に広告主側は、クリエイターが元投稿を消せばクリエイター名義の広告も止まるというリスクを抱えているので、投稿の非公開・削除は事前通知を条件にする、という形で相互に縛るのが実務的だ。炎上時は、どちらの側で起きた場合でも相手方の申し入れで配信を一時停止できる条項を置き、停止の判断を後から議論しない構造にしておく。

再交渉と追加報酬は、二次利用の価値が事後にしか分からないという性質に合った項目だ。期間延長、媒体追加、想定より配信が伸びたときの成果連動。「別途協議する」で終わらせず、延長時の報酬をどう考えるか(初回報酬に対する比率で決めるのか、媒体ごとに積むのか。金額の目安は各社の判断になる)、延長の申し出は終了の何日前までか、返答がない場合をどう扱うかまで書く。報酬を成果に連動させる設計は、B2B案件で先に進んでいる「投稿単価」から「LTV連動」への議論と同じ論点で、計測の仕組みと契約の文言を同時に用意しないと機能しない。

見落としがちな3つ──肖像(パブリシティ)、音源、AI加工は「別の枝」

7項目を全部書いても、なお契約に含まれないものが3つある。第一に肖像だ。著作権と肖像・パブリシティの権利は別物で、動画の著作権をすべて渡しても、本人の顔や名前を広告に使う許諾は自動では付いてこない。最高裁判所は平成24年2月2日の判決(いわゆるピンク・レディー事件)で、肖像等が持つ顧客吸引力を排他的に利用する権利を「パブリシティ権」と呼び、人格権に由来する権利の一内容と位置づけた。そのうえで、肖像等を独立して鑑賞の対象となる商品等として使う、商品等の差別化を図る目的で肖像等を付す、肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら顧客吸引力の利用を目的とする場合に侵害となると判示している。

この判例の位置づけを踏まえると、PR投稿の二次利用は「肖像等を商品等の広告として使用する」場面そのものだ。契約書では、著作権の許諾とは別の条項として、肖像・氏名・アカウント名の広告使用を許諾する旨を、期間と媒体をそろえて書く。さらに、動画に映っている本人以外の人物、たとえば友人や店員、通行人は、クリエイターとの契約では権利処理されていない。広告主側は、二次利用する素材にクリエイター以外の人物が映っていないかを、転載前に確認する工程を持ちたい。

第二に音源だ。TikTokの公式ヘルプは、Commercial Music Libraryについて、事業者は一般の音楽ライブラリを商用目的では使えないと明記している。クリエイターが一般ライブラリの音源で作った投稿を、広告主が広告として配信したり他媒体に転載したりすると、音源のライセンスは付いてこない。契約では「二次利用を前提とする投稿はCommercial Music Libraryの音源または権利処理済みの音源で制作する」か、「転載時は音源を差し替えるか無音にできる」かを決めておく。TikTok側の設定と著作権の関係はTikTok「AIリミックス」デフォルトONと著作権リスクの記事も参考になる。

第三にAI加工だ。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日、文化審議会著作権分科会法制度小委員会)は、人が何ら指示を与えずAIが自律的に生成したものは著作物に該当しないと考えられる一方、人が創作の道具としてAIを使い、創作意図と創作的寄与が認められる場合は著作物となり、AI利用者が著作者になるという整理を示している。広告主がAIでクリエイターの動画を多言語化したり背景を差し替えたりした派生物の権利帰属は、この整理に照らして個別に判断されるもので、契約に書かなければ自動では決まらない。

加えて、声や顔をAIで加工・合成することは、著作権だけでなく前述の肖像・パブリシティの問題でもある。デジタルツインやAI吹き替えが現実的な選択肢になった今、契約では「AIによる加工の可否」「加工した生成物の帰属」「加工物の使用範囲」を、通常の改変とは別の枝として明記しておきたい。この論点の全体像はAIインフルエンサー&デジタルツイン完全ガイドで扱っている。

整理すると、二次利用込みの案件で最初にやることは、「二次利用可」の一行を7つの項目に分解し、著作権とは別に肖像・音源・AIの3つの枝を足すことだ。事務所側は永久・白紙委任・削除の入口なしの3つを受けない。広告主側は消せない媒体・認証期間・PR表示の維持の3つを自分の責任として書く。契約書のひな形を用意する前に、この表を発注書の別紙として双方で埋めるだけでも、半年後の発見はかなり減る。

なお、本記事は公開されている法令・判例・ガイドラインに基づく一般的な情報整理であり、法的助言ではない。個別の契約条項の設計や紛争対応は、弁護士等の専門家に相談してほしい。


本記事は、株式会社TORIHADAが運営するクリエイターエコノミー専門メディア「CREATORS POST」がお届けしました。最新のマーケティング・クリエイター動向を、実務目線で発信しています。

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この記事はAIを活用して書いています。

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