Google DeepMindは2026年9月30日(米国時間)、次世代モデル「Gemini 4 Argon」を発表した。Google公式ブログによれば、1回の応答で出力できる量の上限は、従来の6.4万トークンから100万トークンに広がった。導入期間の料金は100万トークンあたり入力2ドル・出力10ドルで、導入期間が終わると入力4ドル・出力20ドルになる。記事の執筆者はGoogle DeepMindのSVP、Koray Kavukcuoglu氏である。
読者企業がまず知っておくべきなのは、Argonは今のところ一般の事業者には使えない、という点だ。最初の提供先は、審査を通った組織だけが参加できるサイバー防御向けの「Fairwind Program」に限られる。開発者・企業・一般の利用者には「できるだけ早く」提供するとされ、その最初の対象は有料のAPI顧客と「Google AI Ultra」の加入者だが、具体的な時期は示されていない。日本での提供時期も発表されていない(10月4日時点)。それでも、価格と出力上限はすでに公表されている。本稿では、一般提供が始まったときに備えて、台本1本、月次レポート、コメント1万件の分析という3つの業務の費用を、GPT-6 AstraやClaude Fable 5.1と並べて計算した。そのうえで、どの業務にどのモデルを使うかを決めるときの判断基準を示す。
何が発表されたか──出力100万トークン、$2/$10、Fairwind先行
公式ブログが打ち出した変更点は、出力上限、料金、性能の3つである。中でも制作の現場に関係が大きいのは出力上限だ。これまでのモデルは入力では長い資料を読めても、1回に書き出せる量が限られていた。そのため、長い台本や大量の分類結果は分割して何度も生成し、あとからつなぎ合わせる必要があった。Googleは今回の100万トークンを「業界最高水準(industry-leading)」と表現している。
料金は、導入期間中が入力2ドル・出力10ドル(いずれも100万トークンあたり)で、キャッシュした入力は入力料金の95%引きになる。導入期間が終わると入力4ドル・出力20ドルに上がるが、公式ブログには導入期間の終了日が書かれていない。性能については、実際のソフトウェア開発を想定したベンチマーク「DeepSWE v1.1」で77.9%、長い動画の理解を測る「LVBench」で91.7%、業務の自動化を測る「AutomationBench」で51.3%という数字が示された。国内のexaWizards AI新聞は、比べた18項目のうち12項目で首位になったと伝え、比較の相手にはOpenAIのGPT-6 AstraとAnthropicのClaude Opus 5.5が挙がっているとしている。ただ、入力側でどこまでの長さを扱えるか(コンテキスト長)は、公式ブログには明記されていない。
「今使えるか」を分ける──Fairwind Programと一般提供の違い
「Argonを使えるか」という問いには、提供のルートごとに答えが違う。発表を見てすぐに試そうとしても、ほとんどの事業者は今の段階では入れない。Fairwind Programの公式ページによれば、この制度は世界で650以上のパートナーと組んでおり、優先して受け入れる対象は、政府や国のサイバー当局、医療・通信・エネルギー・金融などの重要インフラ事業者、中核となるテクノロジー基盤の事業者である。防御のためのベンチマーク研究を行う学術機関も申し込める。
| 項目 | Fairwind Program(現在) | 一般提供(予定) |
|---|---|---|
| 対象 | 政府・重要インフラ事業者・中核テクノロジー基盤など、審査を通った組織 | まず有料のAPI顧客とGoogle AI Ultra加入者。その後に開発者・企業・一般の利用者へ |
| 使える人 | 社内のサイバーセキュリティ、インシデント対応、ペネトレーションテストのチームに限る | 公表されていない |
| 条件 | 利用者単位の認証、フィッシングに強い多要素認証、社員の利用状況の記録。アクセスの共有・再配布・販売は禁止 | 公表されていない |
| 時期 | 9月30日から順次 | 「できるだけ早く」とされ、日付は示されていない |
| 日本 | 国・地域の記載はない | 日本での提供は発表されていない(10月4日時点) |
表を見るとわかるとおり、クリエイター事務所やD2Cブランドが、制作やマーケティングの目的でFairwind Programに入ることは想定されていない。使えるのはセキュリティ部門に限られ、アクセスを他の部署に回すことも禁じられている。最上位モデルを審査つきの限られた相手から出していく流れは、当メディアのGPT-5.6の記事でも取り上げた。つまり、今週の時点で読者企業にできるのは、Argonを試すことではない。一般提供が始まったときに、すぐに判断できるよう準備しておくことである。
実務ケースで費用を再計算する
「100万トークンあたり2ドル」は安く聞こえる。ただ、実際の請求額は、入力と出力にそれぞれ何トークン使うかで決まる。そこで、事務所やブランドがよく行う3つの業務についてトークン量を仮に置き、各社の公式価格で計算した。比べたのは、Argonの導入価格と通常価格、GPT-6 Astra(OpenAIの料金表)、Claude Fable 5.1とClaude Opus 5.5(Anthropicの料金表)の5つである。トークン量はいずれも本稿の仮定だ。GPT-6 Astraは、入力が27.2万トークンを超えると長文向けの料金(入力20ドル・出力75ドル)に切り替わるため、その条件に当たるケースでは長文向けの料金で計算した。
| 業務(本稿の仮定) | Argon 導入価格 $2/$10 |
Argon 通常価格 $4/$20 |
Claude Opus 5.5 $4/$20 |
Claude Fable 5.1 $10/$50 |
GPT-6 Astra $10/$50(長文$20/$75) |
|---|---|---|---|---|---|
| 長尺動画の台本1本(入力2万・出力1万トークン) | $0.14 | $0.28 | $0.28 | $0.70 | $0.70 |
| 月次レポート(入力30万・出力5万トークン) | $1.10 | $2.20 | $2.20 | $5.50 | $9.75(長文料金) |
| コメント1万件の全件分類(入力50万・出力20万トークン) | $3.00 | $6.00 | $6.00 | $15.00 | $25.00(長文料金) |
前提も書いておく。台本は、ブリーフ・ブランド資料・過去の台本を入力し、長尺動画1本ぶんを出力する想定である。月次レポートは、各SNSの数値と前月のレポートをまとめて読ませる想定にした。コメントの分析は、1件あたり平均50トークンのコメントを1万件読み込み、1件ごとに20トークン程度の分類ラベルと要約を返す想定だ。このうちコメント分析は、全件の分類結果を1回で書き出せるかどうかで作業の手間が大きく変わる業務で、出力上限の拡大がいちばん効いてくる。なお、GPT-6 AstraとClaudeの各モデルについては、本稿で確かめたのは料金だけである。1回でこの量を出力できるかは各モデルの上限によるため、表は費用だけを比べたものとして読んでほしい。
表から読み取れることは2つある。ひとつ、Argonの通常価格($4/$20)はClaude Opus 5.5の公式価格とまったく同じで、導入価格($2/$10)はAnthropicの料金表にあるClaude Sonnet 5.5と同じ水準である。最上位級の性能をうたうモデルを、各社の中位モデルと同じ価格帯に置いてきた、ということになる。ふたつ、金額そのものは、どのモデルを選んでも1件あたり数十円から数千円の範囲に収まる。月に数百本の台本を作る程度なら、モデルの単価の差よりも、人が確認し直す時間のほうが費用として大きくなりやすい。単価の差が経営判断に響いてくるのは、コメント分析のように何万件もの処理を毎日繰り返す業務である。
「$2」をどう読むか──導入価格、キャッシュ、トークン数の差
予算を立てるときに「$2」をそのまま使うと、見込みを誤るおそれがある。注意したい点は3つある。
ひとつめは導入期間の終了日だ。公式ブログに終了日の記載はなく、導入期間が終われば料金は入力・出力とも2倍になる。月次で使い続ける業務の予算は、通常価格の$4/$20で組んでおき、導入期間中に浮いた分は検証用の費用に回すのが安全である。
ふたつめはキャッシュだ。キャッシュした入力が95%引きになるため、毎回同じ資料を読ませる業務ほど得になる。たとえば5万トークンのブランドガイドラインを毎回読み込ませて100本の投稿文を作る場合、入力は合計500万トークンで、導入価格なら10ドルかかる。これがキャッシュに乗れば0.5ドルまで下がる計算だ(キャッシュの保存料金の有無は、公式ブログには記載がない)。ブランドガイドライン、NG表現リスト、過去の成功事例のように、いつも同じ資料を先頭に置く運用は、このキャッシュの仕組みと相性がよい。
みっつめは、同じ文章でもモデルによってトークン数が変わることだ。Anthropicは料金ページで、新しい世代のモデルが使う方式では、同じ文章でもおよそ30%多くトークンが数えられると説明している。つまり、トークン単価を並べただけでは各社の費用を正しく比べられない。日本語の文章が何トークンになるかもモデルによって違う。実際に比べるときは、自社の台本やコメントのデータをそれぞれのモデルに通し、実際に数えられたトークン数で計算し直す必要がある。
事務所・ブランドのAI選定ルール──用途別の使い分けと今やること
新しいモデルが出るたびに乗り換えていると、プロンプトの調整や品質の確認をそのたびにやり直すことになる。Argonの登場を機に見直したいのは、どのモデルを使うかよりも、どういう基準で選ぶかである。本稿では、業務を「1回に出力する量が多いか」「同じ処理を何度も繰り返すか」「表現の質が重要か」の3つの軸で分けることを勧めたい。出力量が多く繰り返しも多いコメント分析やタグ付けは、Argonのように出力上限が大きく単価の安いモデルが合う。一方、ブランドの声色を担う企画書やコピーは、単価が高くても、自社の基準に照らして品質が安定しているモデルを選ぶ理由がある。PCを操作する作業ではGPT-6 Astra、スライドや企画書の作成ではClaude Fable 5.1と、それぞれの強みは過去の記事で整理した。また、常用モデルが主役になる流れは、今回の価格設定にも表れている。
一般提供を待つあいだに進めておける作業を挙げる。
- 台本・レポート・コメント分析など、業務ごとに入力と出力のトークン量を実測し、表と同じ形で費用を試算しておく
- 予算は導入価格ではなく、通常価格($4/$20)で組んでおく
- ブランドガイドラインやNG表現リストなど、毎回読ませる資料を固定し、キャッシュを効かせやすい形に整えておく
- 出力を1回にまとめた場合に、人が確認する手順(抜き取り検査の件数、誰が確認するか)を先に決めておく
- APIを使う場合、Google Cloudの契約内容とデータの取り扱い条件を、法務・情報システム部門と確認しておく
- 1つのモデルに頼り切らず、止まったときに切り替える先のモデルを決めておく
最後の項目は、念のためではなく実際に起きたことへの備えである。最上位モデルが発表の直後に止まった例は、Claude Fable 5の全面停止として当メディアでも報じた。Argonについては、出力100万トークンと$2という数字に目が向きがちだ。しかし、事務所やブランドにとって重要なのは、一般提供が始まった日にすぐ費用を試算し、使う業務を決められる状態にしておくことである。
本記事は、株式会社TORIHADAが運営するクリエイターエコノミー専門メディア「CREATORS POST」がお届けしました。最新のマーケティング・クリエイター動向を、実務目線で発信しています。
この記事はAIを活用して書いています。



