2026年7月27日(現地時間)、X(旧Twitter)が米国で決済サービス「X Money」を正式にローンチした。P2P送金、預金口座、Visaデビットカードをアプリ内に統合し、X PremiumおよびPremium+の加入者向けに順次展開されている(出典:ITmedia NEWS)。
クリエイターにとって重要なのは、これが単なる送金アプリではない点だ。金融機能がXアプリ内に統合されたことで、「ポストで稼ぎ、貯めて、そのままXのカードで使う」流れが将来的にアプリ内で完結する土台が整った。
ただし、現時点で利用できるのは米国のみ。日本での提供時期は発表されていない。本記事では、確認できた事実を整理したうえで、日本のクリエイター・SNS運用担当者にとっての意味を考える。
送金・預金・カードを1つに──X Moneyの中身
SNSの「おまけ機能」を想像すると実態を見誤る。X Moneyは預金口座からデビットカードまでを備えた、銀行口座にかなり近いフルセットの金融サービスだ。まず、正式ローンチ時点で報じられている主な機能を整理しておこう(出典:GIGAZINE)。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| P2P送金 | Xユーザー同士なら手数料無料・金額や回数の上限なしで即時送金 |
| 預金口座 | アプリ内に口座を開設。銀行口座との入出金に対応、ATM引き出し手数料は無料 |
| X Card | Visaデビットカード。バーチャルカードが自動発行され、金属製の実物カードも提供。Apple Pay対応、海外利用手数料なし |
| 年利 | Premium+加入者は年6.00%。Premium加入者も給与の直接入金先に指定すれば同率が適用 |
| 還元 | X Cardでの対象となる買い物で3%キャッシュバック |
| 給与早期受取 | 直接入金の設定で、給与を通常より最大2日早く受け取り可能 |
裏側の仕組みも押さえておきたい。決済は子会社のX Payments LLCが担い、ユーザーの資金は米国のFDIC(連邦預金保険公社)加盟銀行であるCross River Bankで管理される。セキュリティ面ではパスキー認証や利用上限の設定、Visaの不正検知システムが採用されているという。SNS企業が自前で銀行免許を取るのではなく、既存銀行と組んで口座機能を提供する、米国フィンテックの定石的な構成だ。
対象はあくまで有料加入者である点にも注意したい。米TechCrunchによれば、Premiumは月額8ドルから、Premium+は月額40ドルから(2025年の値上げ後の価格)の有料プランで、X Moneyはこの加入者に段階的に開放されている(出典:TechCrunch)。無料ユーザーが今すぐ使えるサービスではなく、Xの有料会員向け特典という位置づけから始まっている。
「ポストで稼ぎ、Xで使う」──クリエイター収益の受け皿へ
送金と預金だけなら、米国にはPayPalやCash Appといった先行サービスがすでにある。X Moneyの独自性は、Xのクリエイター収益と直結する点にこそある。米国では、広告収益分配などXのクリエイター向け支払いの受け皿としてX Moneyを位置づける構想が語られており、実現すれば従来の銀行送金を待たずに収益へアクセスできるようになる。ただしローンチ時点で収益受取に正式対応したかは公式には確認されておらず、今後の発表を待つ段階だ。
この一手で、クリエイターのお金の流れが変わる可能性がある。ポストで稼いだ収益がX内の口座に入り、残高には最大6%の年利が付き、X Cardで使えば3%が還元される。稼ぐ・貯める・使うの3ステップがアプリの外に出ずに完結する構図だ。イーロン・マスク氏が2022年のTwitter買収以来語ってきた「everything app(スーパーアプリ)」構想の、金融面での実装が始まったと言っていい。
プラットフォームがクリエイターの収益に深く入り込む動きは、Xに限らない。MetaはThreadsで4億MAUを背景に収益化プログラムを拡大しており、クリエイターエコノミーは米国の年間1,170億ドル規模のソーシャル広告費の流れを組み替えつつあると指摘されている。各プラットフォームが「稼げる場所」を競う次の段階として、「稼いだお金の置き場所」まで囲い込みに来た──X Moneyはその最初の本格例だ。
クリエイター側から見れば、収益の受け取りやすさはプラットフォーム選びの新しい判断軸になる。TikTokクリエイターの収益の現実で見たように、多くのクリエイターは複数の収益源を組み合わせて生計を立てている。入金の速さや手数料、資金の使い勝手といった「お金の導線」の差は、複数プラットフォーム運用の配分を左右する要素になっていくだろう。
日本のクリエイターにとっての現在地
では、日本のクリエイターは今すぐ何か変わるのか。結論から言えば、現時点では何も変わらない。X Moneyは米国のPremium/Premium+加入者限定のサービスであり、日本からは利用できない。日本での提供時期についても、公式な発表は確認できていない。
日本上陸には時間がかかる可能性が高い。日本で送金や預金に相当するサービスを提供するには、資金決済法に基づく資金移動業の登録など、金融規制への対応が必要になるためだ。米国でも州ごとのライセンス取得を進めながらの段階的展開とされており、グローバル展開はさらにその先の話になる。「日本でもすぐ使える」といった情報が出回っても、公式発表を確認するまでは慎重に見たほうがいい。
それでも、この動きを「海外の話」と切り捨てるべきではない。収益の受け取りから消費までがプラットフォーム内で完結する世界は、便利さと引き換えに、特定プラットフォームへの依存を深める世界でもある。アカウント凍結や規約変更が収益だけでなく「銀行口座」まで直撃するリスクを、米国のクリエイターはこれから経験していく。「所有するオーディエンス」への移行で論じたとおり、プラットフォームに依存しすぎない収益とファンの逃がし先を持っておくことの重要性は、金融統合の時代にはむしろ増していく。
日本のクリエイター・SNS運用担当者が今やるべきことはシンプルだ。第一に、米国での定着度と他プラットフォームの追随を観察すること。第二に、X収益化の条件(Premium加入やエンゲージメント要件)を整えておき、日本展開時に乗り遅れない状態を作っておくこと。「ポストで稼ぎ、Xで使う」経済圏はまだ米国で産声を上げたばかりだが、クリエイターエコノミーとフィンテックの融合という流れ自体は、もう後戻りしないだろう。
本記事は、株式会社TORIHADAが運営するクリエイターエコノミー専門メディア「CREATORS POST」がお届けしました。最新のマーケティング・クリエイター動向を、実務目線で発信しています。
この記事はAIを活用して書いています。



