2026年9月23日(米国時間)、YouTubeは年次イベント「Made on YouTube 2026」を開催し、CEOのニール・モーハン氏が公式ブログで発表内容をまとめた。動画そのもののA/Bテスト、会話で進める編集、顔に加えて声も守る類似性検出、ライブの対戦・共同配信、ショッピングアフィリエイトの35カ国拡大。項目は多いが、クリエイター事務所やブランドの担当者にとっての要点は3行で済む。
ひとつ、YouTube Studioが「投稿と分析の場所」から「制作判断を実験で決める場所」に変わる。ふたつ、AIで作る系の機能は日本語では当面使えないものが多く、守る系(類似性検出)と稼ぐ系(ブランド案件・アフィリエイト)は日本でも動く。みっつ、日本では新たにYahoo!ショッピングがYouTubeショッピングアフィリエイトのパートナーに加わった。この記事では、発表を「今年中に運用で変えること」に落として読み直す。
まず全体像──「作る・守る・稼ぐ」の三層と、日本で動くもの・動かないもの
今年の発表は、モーハン氏のブログの構成どおり「制作を楽にする」「肖像を守る」「ファンダムとつながる」「ブランド案件を回す」の4章に分かれている。ただし事務所やブランドの担当者が最初に確認すべきなのは機能の中身ではなく、日本でいつ使えるかだ。ITmedia NEWSが指摘するとおり、イベント本体ではほとんどの新機能について提供時期や地域が明示されず、日本語の機能名も未発表である。
手がかりになるのは、YouTube日本版公式ブログだ。英語版と同じ本文に、日本向けの提供状況が括弧書きで追記されている。それを英語版の各詳細記事と突き合わせると、主要機能の見通しは次の表のように整理できる。
| 機能 | 内容 | 提供見通し(公式表記) |
|---|---|---|
| 動画A/Bテスト | 最大3つの編集版を比較し、どの冒頭が視聴者を最も引きつけるかを測る | グローバルで今後順次展開 |
| Studioのドラフト評価・サムネ生成・ダイナミックサムネ | 下書きへの助言、チャンネル調のサムネ生成、3案を視聴者層別に出し分け | グローバルに近日中に順次展開 |
| 会話型編集アシスタント | ショートとYouTube CreateアプリにGeminiを統合 | ショートは英語のみ順次展開、Createアプリは日本未定 |
| 類似性検出のモバイル対応・声の統合 | スマホから登録・確認・対応、話し声の検出を顔検出と統合 | 年内に開始、当面は英語のみ順次展開 |
| Watch With拡大(React live) | 対象の長尺動画にリアクション配信できる | 今年後半から順次、グローバル |
| Go Live Together マッチング/ライブショーダウン | 配信中クリエイターとの共同配信マッチング、視聴者ファンディングのチーム対決 | マッチングは2027年初頭、ショーダウンは2027年 |
| ライブ自動吹き替え | 配信音声をリアルタイム翻訳 | 2027年初頭に英語・スペイン語で試行 |
| ショッピングアフィリエイト拡大 | 年内35カ国、海外でのAmazon対応、視聴者所在地に応じたタグ表示 | 日本は既に対象国、Yahoo!ショッピングが新パートナー |
| カスタムフィード(視聴者向け) | 会話で作るホーム画面の専用タブ | 米国対象、日本は未定 |
表を眺めると構図が見える。生成AIで「作る」側の機能は英語から始まり、日本語圏の現場は数カ月から年単位で後追いになる。一方で「守る」と「稼ぐ」は国境の影響が小さく、日本のチャンネルでも年内に運用へ組み込める。だから優先順位は、AI編集を試すことではなく、実験・保護・商流の3つの土台を先に整えることになる。以下、5つの運用変更として順に見ていく。
変えること①:サムネと動画の「正解探し」を、担当者の勘から実験の設計に移す
担当者が数時間悩んで決めたサムネイルより、視聴者に3案を見せて2週間走らせた結果のほうが正しい。この当たり前が、今年の発表でサムネイルから動画本体にまで広がる。YouTube Studioの新機能を解説した公式ブログ(Aparna Pappu副社長)によれば、2024年に正式提供されたタイトルとサムネイルのA/Bテストは、これまでに4,000万回以上の実験に使われた。そこへ「最大3つの動画カットを比較し、どの冒頭が最も視聴者を引きつけるかを試せる」動画A/Bテストが近日中に加わる。
現行のA/Bテストの仕様は公式ヘルプで確認できる。勝敗を決める指標はクリック率ではなく総再生時間で、テストは2週間以内に完了し、パソコン版Studioのみ、ショート動画は対象外という条件がついている。動画本体のテストがどの指標で勝敗を決めるかは現時点で公表されていないが、「どの冒頭(hook)が視聴者を引きつけるか」という説明から、視聴維持に近い指標が軸になると読むのが自然だろう。
事務所やブランドの運用で変わるのは、制作の納品物だ。これまで「完成動画1本+サムネ2〜3案」だった納品が、「冒頭の異なるカット3本」を含む設計に変わる。冒頭15秒を3パターン作るには、撮影段階でオープニングの素材を複数取っておく必要があり、台本の作り方から変わる。タイアップ案件であれば、どのカットが採用されるかを事前に決められない前提で、ブランド側の考査や納品確認のフローも「3本まとめて確認」に組み替えなければならない。
あわせて発表された「ダイナミックサムネイル」は、YouTubeが3つのサムネ候補から視聴者層ごとに最適なものを出し分ける機能だ。さらにAsk Studioがバックグラウンドで過去動画を見直し、サムネの刷新案を提案・テストするという。これはつまり、公開後に放置されていたバックカタログが、担当者の手を借りずに再テストされ続けることを意味する。過去の再生数をKPIに置いている場合、当メディアが再生回数のカウント基準変更で整理したように、認知の指標と質の指標を分けて見る習慣がないと、変化の理由を説明できなくなる。
変えること②:会話型編集は「英語から」──日本語チームは待つのではなく、指示の型を作る
ショート動画とYouTube Createアプリに、Geminiを統合した会話型の編集アシスタントが入る。提案されたプロンプトか自分の言葉で最初のドラフトを作り、チャットを続けながら無音部分のトリミング、テンポを良くする並べ替え、音楽のビート同期などの提案を受け、いつでも手動編集に戻れる。公式ブログは、今年前半にGemini OmniをショートとYouTube Createに導入した結果、2026年8月だけで1日あたり数十万チャンネルが利用したと説明している。
ただし日本版公式ブログの注記を読むと、ショート向けは「グローバルに英語でのみ今後順次展開予定」、YouTube Createアプリ向けは「日本未定」とある。日本語で運用するチームにとって、この機能は当面「来ない」に近い。同じ公式ブログが引く数字も米国のものだ。初の生成AIトレンドレポートで、米国の14〜44歳の動画投稿者の72%が過去1年にAIを制作や編集の補助に使ったとされているが、これは米国内の調査結果であり、日本のクリエイターの利用実態を示すものではない。
それでも、この機能を「日本には無関係」と片付けるのは早い。会話型編集が現場に入ると、編集者の仕事は「切る・つなぐ」から「何を残し、どの順で見せるかを言葉で指示する」へ移る。英語圏でその移行が先に起き、事務所の編集体制や1本あたりの単価の相場は英語圏から変わっていく。日本語対応を待つ数カ月は、編集の指示を言葉に書き下す練習期間として使える。ショート1本の「残す発言」「テンポの基準」「テロップの入れ方」を文章で指示できる状態にしておけば、機能が来た日から使い始められる。
ショートの文脈でもうひとつ見落とせないのが、同日に公開された「ショートシリーズ」だ。TV向け機能を解説した公式ブログによれば、ショートをシーズンとエピソードに整理し、カスタムサムネと連続再生に対応する機能が9月23日からウェブ・モバイル・TVで展開を始めている。同ブログは、2026年上半期にYouTube上のマイクロドラマ(縦型ショートドラマ)が65億回再生を超え、総再生時間が前年比50%以上伸びたと明かした。日本版ブログでは「グローバル対象」とされており、連載形式のショートを持つチャンネルは、こちらは今日から設定できる。
変えること③:類似性検出を「所属タレント全員の初期設定」にする──声の検出が年内に統合される
AIで作る機能が英語から始まる一方、AIから守る機能は今すぐ日本でも動かせる。公式ブログは、類似性検出(Likeness detection)について「数十億のチャンネルが自動ディープフェイク検出の登録対象」と述べ、年内に話し声の検出を顔検出と統合して照合精度を高めること、YouTubeモバイルアプリから登録・確認・対応ができるようにすることを発表した。当メディアは2026年のYouTubeアップデート整理でこの機能の展開経緯を追ったが、今回の発表で「顔だけ」から「声も」へ範囲が広がる。
仕組みは公式ヘルプに詳しい。新しくアップロードされた動画をYouTubeのシステムが一度スキャンし、登録済みクリエイターの顔が含まれている可能性のある動画を特定する。Content IDと似た仕組みだが、探すのは著作物ではなく本人の類似性だ。利用には18歳以上、チャンネルの所有者またはマネージャーであること、政府発行の身分証と自撮り動画による本人確認が必要で、検出されたコンテンツはプライバシー侵害の申し立て手続きに沿って削除を求められる。ヘルプは現時点でも「試験運用版であり、一部の国では利用できない」としており、日本版ブログも声の統合とモバイル対応は「当面は英語でのみ順次展開」と注記している。
事務所にとってこの機能の意味は、所属タレントの権利管理が「事後対応」から「事前登録」に変わることだ。登録は本人の身分証と顔動画を伴うため、事務所が代行することはできない。だが本人確認が済めば、チャンネルのマネージャーや編集者の権限で一致コンテンツの確認や報告を行える。タレント本人に一度だけ登録してもらい、その後の監視と申し立ては事務所側で回す体制が組める。声の検出が統合されれば音声中心のクリエイターにも保護が届く可能性があるが、公式ブログはこれを「長期的な音声保護の基礎」と表現しており、範囲と時期は今後の発表を待つ必要がある。
ブランド側の運用にも影響がある。タレントを起用したタイアップ動画のAI改変が出回った場合、これまでは発見も削除依頼もタレント本人か事務所の善意に頼っていた。今後は、起用契約の中で「類似性検出への登録状況」と「検出時の連絡経路」を確認事項に加えることで、ブランド毀損の初動を早められる。当メディアがYouTubeショートの「自分のAIアバター」機能を取り上げた際に触れたとおり、公式に分身を作れる時代は、無断の分身を見分ける仕組みと同時に整う必要がある。
変えること④:ライブは2027年の対戦・吹き替えの前に、「リアクションを許す動画」を決める
ライブ配信の発表は3つが2027年、1つが年内だ。YouTube Liveの公式ブログ(Barbara Macdonald氏)によれば、2026年8月には1日平均6億人以上のログイン視聴者がライブコンテンツ(アーカイブ含む)を見ており、ライブ総再生時間の40%以上は居住国外からだという。共同配信の相手を見つける「Go Live Together」のマッチングは2027年初頭、視聴者のチャットやギフト、Super Chatでスコアを競う「ライブショーダウン」は2027年、配信音声をリアルタイム翻訳する「ライブ自動吹き替え」は2027年初頭に英語・スペイン語で試行開始。いずれも来年の話だ。
年内に動くのは「Watch With」の拡大である。ライブ配信同士に限られていたリアクション配信が、YouTube上の対象となる長尺動画すべてに広がり、今年後半から順次展開される。対象動画で「React live」をタップすれば、その動画を見ながらライブを始められる。リアクションする側はライブ広告収益とファンからの支援をそのまま受け取り、元動画のクリエイターには原典表示とStudio上の視聴回数クレジットが付き、どの動画へのリアクションを許可するかを本人がコントロールできる。日本版ブログでもこの機能は「グローバル対象」だ。
事務所やブランドが年内にやるべきことは明確で、「自分たちの動画に、他のクリエイターがリアクション配信することを許可するか」を動画単位で決めることだ。エンタメ系の事務所なら、ファンによるリアクションは拡散と視聴回数クレジットの両方を生む。一方、タイアップ動画やブランドの公式チャンネルでは、第三者の配信に商品が映り込み、そこで投げ銭が発生する状況を広告主が望むかどうかは案件ごとに違う。契約書に「リアクション配信の可否」を入れるのは、機能が全面展開される前の今が一番簡単だ。
2027年の3機能は、いずれも「ライブで稼ぐ」構造を国境の外へ広げる方向を向いている。自動吹き替えは英語・スペイン語からで日本語は含まれないが、当メディアがアップロード動画の自動吹き替えを取り上げたときと同じ順序で、対応言語は後から広がる可能性がある。ライブショーダウンは視聴者ファンディングをチーム対決に変える仕組みであり、日本版ブログは「グローバルに2027年順次展開予定」と記している。今年は機能を待つより、どのクリエイター同士を組ませると双方のコミュニティが盛り上がるか、共同配信の相性を試しておく時間にあてたい。
変えること⑤:ブランド案件はStudioに集まる──Creator Partnershipsは日本対応、アフィリはYahoo!ショッピングが参加
ブランド案件の入口が、代理店の名簿からYouTube Studioに移りつつある。収益化を解説した公式ブログによれば、チャンネルをブランドに見つけてもらう「YouTube Creator Partnerships」は20カ国で利用可能になり、公式ヘルプの提供国一覧には日本が含まれている。近日中にはAsk Studioでブランドのブリーフに合わせた返信や売り込み資料を作り、メディアキットを調整するヒントも得られるようになる。当メディアはCreator Partnershipsの発表時にブランド案件のプラットフォーム化を取り上げたが、今回は「日本で使える」状態が公式に確認できた点が大きい。
実務で効くのは細部だ。ブランド案件動画を投稿した後、ワンクリックのコードでブランド側にアクセス権を渡せるようになり、ブランドは動画の成績を見て、その動画に広告費を載せて配信(Creator Partnerships Boost)できる。長尺動画最大20本に同時にブランド区間を差し込み、地域別にターゲティングし、行動喚起ボタン付きの棚を出す「ダイナミック・ブランド・セグメント」のテストも続く。さらにYouTubeは、成果の大きい協業を評価するため代理店パートナーへ数億ドル規模のインセンティブを投じるとしている。事務所側は、タイアップ動画のレポートを手作業でまとめる工程を、Studioのアクセス共有に置き換える準備を年内に始めたい。
ショッピングアフィリエイトは、年末までに対象を35カ国へ広げ、視聴者の所在地に応じてローカライズされた商品リンクを表示し、海外での購入にもコミッションがつく仕組みになる。公式ブログによれば、参加クリエイターは130万人を超え、流通取引総額は過去2年で13倍に伸び、商品タグは説明欄のリンクより2倍以上クリックされるという。Amazon商品のタグ付けは米国で始まり、数週間以内にインドとブラジルへ広がるが、日本でのAmazon対応は今回の発表に含まれていない。日本での基本的な仕組みと参加条件は、当メディアの日本上陸時の解説を参照してほしい。
日本にとっての新しい事実は、日本版公式ブログに追記された一文にある。LINEヤフーが運営するYahoo!ショッピングが、YouTubeショッピングアフィリエイトプログラムのパートナーに新たに加わったという。日本では2026年2月の開始時に楽天市場が国内初のパートナーとなっており、これで国内の大手モール2社がそろう形になる。ただし、Yahoo!ショッピング商品のタグ付けが実際にいつから、どの条件で使えるかは記事執筆時点で公表されていない。現時点で確認できるのは、日本版公式ブログのこの記載と、公式ヘルプの対象国一覧に日本が含まれていることまでだ。
あわせて新設される「アフィリエイトキャンペーン」では、小売業者やブランドが特定商品を紹介するクリエイターに特別なコミッション率やボーナスを提示できるようになる。ブランド側は、これまでASP経由で組んでいたインフルエンサーの成果報酬を、YouTube上で直接設計する選択肢が増えることになる。
まとめ──年内にやる5つを、担当者の予定表に置き直す
Made on YouTube 2026で発表された機能を一つずつ追うと、AI編集の派手さに目が向く。だが日本で運用する事務所やブランドにとって、年内に動くのは実験・保護・商流の3つの土台だ。
整理すると、①次に制作する動画から冒頭3パターンとサムネ3案を納品物に含め、動画A/Bテストの展開を待たずに現行のタイトル・サムネテストを全動画で回す。②会話型編集の日本語対応は待たず、編集指示を文章の型に落とす。③所属タレント全員に類似性検出の本人確認を済ませ、監視と申し立てを事務所のマネージャー権限で回す。④動画単位で「リアクション配信の許可」を決め、タイアップ契約の条項に加える。⑤Creator Partnershipsのプロファイルとメディアキットを整え、Yahoo!ショッピング対応の続報が出た時点で商品タグの運用に組み込む。
いずれも新しい予算を必要としない。必要なのは、制作フロー・契約書・権限設定という、普段は年に一度しか見直さない書類を今年中に開くことだ。来年の対戦ライブや自動吹き替えが日本に届いたとき、土台を整えた組織とそうでない組織の差は、機能の使い方ではなく、使い始めるまでの速さに出る。
本記事は、株式会社TORIHADAが運営するクリエイターエコノミー専門メディア「CREATORS POST」がお届けしました。最新のマーケティング・クリエイター動向を、実務目線で発信しています。
この記事はAIを活用して書いています。



