画像共有サービスのPinterestで、クリエイターが作ったピン(投稿)を、ブランドが自分で選んで広告として配信できる仕組みが広がっている。米国のSNS専門メディアSocial Media Todayが2026年10月7日に報じた。報道によれば、ブランドは自社商品に関係するクリエイターのピンを探して広告にできる。そのピンが、あらかじめ合意したタイアップとしてタグ付けされていなくても構わない。これまで一緒に仕事をしたことのないクリエイターも、対象に入るという。
クリエイターの側には、断る手段が用意されている。Pinterestの英語版ヘルプによれば、ブランドがピンを広告にするとメールで知らせが届く。設定の「Content permissions」にある「Let advertisers promote your content」をオフにすれば、アカウント全体でブランドによる広告配信を止められる。ただし、すでに配信中のキャンペーンは止まらない。一方で、同じヘルプは、この機能が対象のブランドに限ったテストの段階だとも書いている。広告にできるのは、アフィリエイトやクリエイター向けのプログラムなどで「すでに関係のあるブランド」だけだという。報道の「提携なし」と、公式ヘルプの書き方には差がある。
日本で同じ仕組みが使えるかは、発表されていない(10月13日時点)。それでも、ブランドが選び、ブランドのお金で、クリエイターの投稿を広告にするという流れは、二次利用の契約の前提を変える。本稿では、報道・英語版と日本語版のヘルプ・利用規約を読み比べ、「提携なし」が実際にどこまでの話かを確かめる。そのうえで、9月29日の記事で整理した二次利用の7項目に当てはめ、事務所とブランドが許諾と拒否をどう決めるかを判断表にまとめる。
何が拡大されたか──「クリエイターがタグ付けする」から「ブランドが選ぶ」へ
Pinterestには、もともとクリエイターの投稿をブランドの広告にする仕組みがあった。2022年に始まった「有料パートナーシップ」である。Search Engine Landなどの報道によれば、クリエイターが投稿にブランドをタグ付けし、ブランドがそれを承認すると、投稿に有料パートナーシップの表示が付く。ブランドはその投稿を「アイデアアド」として配信できる。日本でも、ピンタレスト・ジャパンが2022年6月15日にアイデアアドの導入を発表している(Web担当者Forum)。この流れでは、クリエイターがタグを付け、ブランドが承認するという2段階の合意がある。
今回の拡大では、最初に動くのがブランドになる。Social Media Todayは、既存の有料パートナーシップは関係のあるブランドをクリエイターがタグ付けするものだと説明している。そのうえで、新しい仕組みではブランドが自分でコンテンツを選べると伝えた。Net Influencerも10月9日に同じ内容を伝えている。下地には、Pinterestが3月24日に発表した「Promote a Pin」がある。TechCrunchによれば、これは個人や中小事業者が少ない手順でピンの表示を増やせる広告ツールだ。日々の予算・期間・対象の利用者を決めて配信する。当初は米国から順に提供し、そのほかの国には後から広げる予定とされた。
| 項目 | 有料パートナーシップ(既存) | ブランドによるピンの広告配信(今回) |
|---|---|---|
| 最初に動く人 | クリエイター(投稿にブランドをタグ付けする) | ブランド(自社商品に関係するピンを探す) |
| クリエイターの合意 | タグ付けそのものが合意。ブランドの承認が必要 | アカウント単位の設定(初期状態はオン)。配信後にメールで通知 |
| 対象のブランド | クリエイターがタグ付けしたブランド | 英語版ヘルプでは、アフィリエイトなどで「すでに関係のある」ブランド。報道では、取引のなかったブランドも含む |
| 止め方 | ブランドが承認しなければ表示が付かない | 設定をオフにする。配信中のキャンペーンは止まらない |
| 報酬 | 当事者どうしの契約で決める | ヘルプにも報道にも記載がない |
| 日本での提供 | 2022年にアイデアアドの導入を発表 | 発表されていない(10月13日時点) |
「提携なし」はどこまで本当か──英語版ヘルプ・日本語版ヘルプ・報道の差
実務で最初に確かめたいのは、どのブランドが自分のピンを広告にできるのかだ。ここは資料によって書き方が違う。Social Media TodayとNet Influencerは、事前のタイアップがなくても、取引のなかったクリエイターのピンも対象になると伝えた。一方、Pinterestの英語版ヘルプは、広告にできるのは「すでに関係のあるブランド」だけだとし、アフィリエイトやクリエイター向けのプログラムを例に挙げる。そのうえで、対象のブランドとテストしている段階だと書いている。
二つを合わせると、「個別の案件契約はなくても、何らかのプログラムでつながっているブランド」と読むのが穏当だろう。例えば、クリエイターがあるブランドのアフィリエイトに参加していれば、そのブランドはクリエイターのピンを広告にできる可能性がある。アフィリエイトに参加したことが、広告配信まで受け入れたことになるかもしれない。どのプログラムが「関係」に当たるのか、具体的な範囲は示されていない。
もう一つの違いは、日本語版のヘルプにある。同じ記事の日本語版は、ブランドは「あなたが Pinterest で作成した対象となるピンをプロモートすることができます」と書く。設定の名前も「コンテンツの権限」「広告主があなたのコンテンツをプロモートできるようにする」と日本語で示している。しかし、テスト中であることや、対象を「すでに関係のある」ブランドに絞る記述は、10月13日時点の日本語版には見当たらない。翻訳が追いついていないだけなのか、条件が違うのかは、資料からは判断できない。報道は、個別の配信だけを断ることもできると伝えているが、そのやり方はどちらのヘルプにも書かれていない。
クリエイターの設定と利用規約──止める手段は「アカウント単位のオフ」
ヘルプに書かれた止め方は、アカウント全体の設定を切り替える方法だけだ。Webでは歯車のアイコン(ビジネスアカウントは右上の下向き矢印)から設定に進み、「コンテンツの権限」でスイッチを切る。アプリではプロフィール写真から設定に進み、オフにしたあと確認の操作をする。変更は自動で保存される。英語版のヘルプは、コンテンツが広告に使われていない場合、この項目が表示されないことがあるとも書いている。項目が見当たらないからといって、将来も対象にならないとは限らない。
止め方がアカウント単位であることは、契約の実務に影響する。設定をオフにすれば、関係を持ちたいブランドからの配信まで含めて、すべてが止まる。オンのままにすれば、どのブランドが配信するかを事前に選べない。しかもオフにしても配信中のキャンペーンは続くので、届いたメールを見てから止めても、そのキャンペーンは終わるまで流れる。全体の設定をオンにするかオフにするかが、事実上の許諾の判断になる。
規約の上では、Pinterestはもともと広い権利を持っている。利用規約(2025年4月30日発効)の第3条(b)では、利用者は投稿したコンテンツについて、Pinterestとその関連会社、サービス提供者、そして「他の利用者」に、無償・再許諾可能・世界共通の利用権を与える。利用の範囲には、改変や派生物の作成、収益化も含まれる。同じ条項は、規約のどこにも、利用者に支払いを受ける権利や収益の分配を受ける権利はないとしている。11月12日に発効する予定の改定版でも、この部分の文言は変わっていない。つまり、プラットフォームの規約の上では、ブランドに広告として使われても、報酬が出る保証はない。報酬や条件を決めたいなら、当事者どうしの契約で決めるしかない。
日本での提供状況──設定の項目は日本語でも案内されている
日本で、ブランドがこの仕組みを使ってクリエイターのピンを広告にできるかについて、Pinterestの発表は確認できなかった。報道もヘルプも、提供している国を示していない。土台のPromote a Pinも、3月の発表時点では米国から提供を始める予定だった。日本の広告主が実際に使えるかは、Pinterestの広告の窓口で確かめる必要がある。
ただ、日本語版のヘルプに設定の名前と手順が載っている以上、日本のクリエイターのアカウントにも「コンテンツの権限」の項目が出ることはありうる。海外のブランドが配信するとき、日本のクリエイターのピンが対象になるのかも分からない。日本で始まるかどうかを待つより、所属するクリエイターのアカウントでこの項目が表示されるか、初期状態がオンかオフかを先に確かめておくほうが現実的だ。初期状態がオンになる設計は、TikTokの「AIリミックス」の記事で取り上げた設定とも似ている。
二次利用7項目に当てはめる──ブランドが選んで広告にする場合の判断表
9月29日の記事では、二次利用を含むPR案件の契約で決めるべき項目を、期間・媒体・広告配信・改変・PR表示・削除・再交渉の7つに整理した。今回の仕組みは、この7項目のうち、多くを契約ではなくプラットフォームの設定と規約に委ねてしまう。下の表は、項目ごとに何が起きるかと、事務所・ブランドが決めておくことを本稿がまとめたものだ。Pinterestが示したものではなく、表の中の「現状」は10月13日時点のヘルプ・報道・規約に基づく。
| 7項目 | ブランドが選んで広告にする場合の現状 | 事務所(クリエイター側)が決めること | ブランドが決めること |
|---|---|---|---|
| 期間 | 配信の期間はブランドが決める。オフにしても配信中のキャンペーンは続く | 受け入れる最長の期間と、通知を受けてから連絡するまでの手順 | 配信前にクリエイターへ期間を伝えるかどうか |
| 媒体 | Pinterestの中に限られる。ほかの媒体への転用はこの仕組みの範囲外 | Pinterestの外への転用は別の契約になると明記する | 他の媒体でも使うなら、別に許諾を取る |
| 広告配信 | アカウント全体の設定がオンなら、対象のブランドは配信できる。個別の承認の手順はヘルプにない | 設定のオン・オフをクリエイターごとに決め、理由を記録する | アフィリエイトの参加者の投稿を広告にするときの社内ルール |
| 改変 | ヘルプには、文言の書き換えや切り抜きの可否の記載がない | 改変を認めない場合は、配信前の確認を条件にする | 改変を伴う使い方は個別の契約にする |
| PR表示 | どんな広告の表示が付くかは、ヘルプに記載がない | 元の投稿が広告ではない場合、広告として流れることで誤解を受けないかを確かめる | 日本で配信するなら、広告主として、広告だと分かる表示になっているかを確かめる |
| 削除 | クリエイターが止める手段は、全体の設定をオフにすることだけ。配信中のものは止まらない | ブランドに配信の停止を求める窓口と、停止を求める条件 | 停止を求められたときに応じるまでの日数 |
| 再交渉 | 規約上、報酬を受け取る権利はない。報酬の仕組みは示されていない | 反応のよかったピンを、有償の契約に切り替える提案の基準 | 効果の出たピンについて、正式な契約を申し込む基準 |
表で特に注意したいのは、広告配信・PR表示・削除の3項目だ。広告配信は、ふつうの契約では案件ごとに許諾するが、ここではアカウント単位のスイッチ1つで決まる。PR表示は、日本のステルスマーケティング規制(2023年10月1日施行)に関わる。消費者庁は、規制の対象を商品を供給する事業者、つまり広告主だとしている。クリエイターの投稿を広告として配信すれば、それはブランドの表示として扱われうる。仮に日本で提供が始まれば、広告の表示を確かめるのはブランドの側の仕事になる。
広告の中身についても同じことが言える。クリエイターが自分の言葉で書いた感想でも、ブランドが広告として配信すれば、その文言の責任はブランドの側にもかかってくる。化粧品や健康食品のように表現の規制が厳しい商品では、クリエイターが何気なく書いた効能の言い回しが、広告としては使えないことがある。配信の前に、PR投稿で「書けない言葉」チェックリストと同じ観点で、元のピンのタイトルと説明文を確かめておきたい。
事務所とブランドが今決めておくこと
判断の起点は、クリエイターごとにこの設定をオンにしておくか、オフにするかだ。オンのままにすれば、ブランドの広告で表示が増えるかもしれない。ヘルプは、ピンのタイトルや説明文でブランドに触れることを、広告にされやすくなる工夫として挙げている。一方で、どのブランドが、どの期間、どんな表示で配信するかは、クリエイターが事前に選べない。競合のブランドと独占の契約を結んでいるクリエイターなら、別のブランドが配信した時点で契約に触れるおそれがある。オフにすれば、関係を持ちたいブランドからの配信まで止まる。この損得は、クリエイターの契約の状況によって変わる。
日本での提供がまだ発表されていない今のうちに、確かめておけることは多い。事務所とブランドがそれぞれ確かめたい点を挙げる。
- 所属クリエイターのアカウントに「コンテンツの権限」の項目が表示されるか、初期状態はオンかオフか
- 独占や競合排除の条項がある契約で、プラットフォームによる広告配信を契約違反に含めるか
- 所属クリエイターが参加しているアフィリエイトやブランドのプログラムの一覧(「すでに関係のある」ブランドに当たりうるもの)
- 通知のメールを受け取る担当者と、受け取ってからブランドに連絡するまでの手順
- ブランドの側で、配信前にクリエイターへ連絡するか、報酬の提案をするかの社内ルール
- Pinterestの広告の窓口に確かめる点(日本での提供の有無、広告の表示、配信を個別に断る手段、報酬の扱い)
同じ流れは、ほかのプラットフォームでも進んでいる。Instagramでは、タグ付けされた投稿をブランドが自分のグリッドに置けるようになった(9月の記事)。どちらも、クリエイターの投稿を、プラットフォームの機能を通じてブランドが使える形にしている。契約で一つずつ許諾を取るやり方と、設定のスイッチで一括に許諾するやり方が併存する以上、事務所は両方を管理する必要がある。所属クリエイターの設定の状態と、結んでいる契約の条項を、同じ表で管理しておきたい。
今回の拡大は、ブランドにとっては使える素材を増やす機会であり、クリエイターにとっては許諾の範囲をアカウント単位で決める必要が生まれたことを意味する。日本での提供が発表されたときに慌てないよう、設定の確認と契約の見直しを先に進めておくとよい。そのうえで、配信されたピンがどれだけ反応を集めたかを見て、正式な契約に切り替える基準を、事務所とブランドの間で前もって話し合っておきたい。
本記事は、株式会社TORIHADAが運営するクリエイターエコノミー専門メディア「CREATORS POST」がお届けしました。最新のマーケティング・クリエイター動向を、実務目線で発信しています。
この記事はAIを活用して書いています。



