Metaは2026年10月12日(米国時間)、同社として初めてのフロンティアモデル「Muse Wonder」と、その上位版「Muse Wonder Full」を公開した。研究部門の公式ブログは、2つを「当社で最も高性能なモデル」と呼び、個人や仕事のエージェント的なタスクで最先端の性能を出すと説明している。公式ブログには価格の記載がない。料金は開発者向けブログに載っており、Meta Model APIでの料金は100万トークンあたり入力4ドル、キャッシュされた入力0.20ドル、出力20ドルだ。一方、Wonder Fullは月額制の「Muse Code」でしか使えない。TechCrunchによれば、APIでは提供されない。
各社の公式の価格ページと突き合わせると、この4ドル/20ドルという料金は、AnthropicのClaude Opus 5.5とまったく同じだった。GoogleのGemini 4 Argonも、12月1日からは同じ料金になる予定である。つまり単価だけでは差がつかない。差が出るのは、1回の仕事にどれだけのトークンを使うか、そしてどの経路で使えるかだ。第三者の評価機関Artificial Analysisの測定がそれを示している。同じ評価課題で、Muse Wonderが出力したトークンは1億3,000万だった。Opus 5.5は2億6,000万で、ちょうど2倍にあたる。
総合スコアではOpus 5.5が上回る。Meta自身が公表した性能値は、同社の自己申告であり、第三者による検証は一部にとどまる。日本での提供については、10月17日時点で公式の発表が見当たらない。本稿では、公式資料と報道を突き合わせて提供経路と料金を整理する。そのうえで、月次レポートの作成を想定して他のモデルとの費用を計算し直し、制作会社やクリエイター事務所がWonderを試すかどうかを決める基準を示す。
何が発表されたか──2つのモデルと、使える経路の違い
今回の発表でまず押さえたいのは、「Muse Wonder」という名前に2つのモデルが含まれ、それぞれ使える経路が違う点だ。公式ブログによれば、Muse WonderはMeta Model APIとMuse Codeで使える。Wonder FullはMuse Codeの契約者だけが使える。どちらも、Metaのエージェントアプリ「Muse」に今後搭載され、まず有料会員から展開される予定である。公式資料と報道で確認できた仕様を、モデルごとに並べた。
| 項目 | Muse Wonder | Muse Wonder Full | 出典 |
|---|---|---|---|
| 使える経路 | Meta Model API、Muse Code | Muse Codeの契約者のみ(APIでの提供なし) | 公式ブログ、TechCrunch |
| API料金(100万トークンあたり) | 入力4ドル、キャッシュされた入力0.20ドル、出力20ドル | 従量課金の料金は発表されていない | 開発者ブログ |
| Muse Codeのプラン | Everyday Usageなど | Power Usage(月50ドル)、Maximum Usage(月200ドル)に含まれる | 開発者ブログ、VentureBeat |
| コンテキスト長 | 100万トークン | 100万トークン | 開発者ブログ |
| 入出力 | テキスト・画像・音声・動画を入力でき、出力はテキスト | 同左 | VentureBeat |
| モデルID・接続 | muse-wonder-1.0。OpenAI互換のクライアントからbase_urlを変えて接続できる |
― | 開発者ブログ |
Muse Codeのプランごとの料金は、開発者ブログには書かれていない。月50ドルと月200ドルという額はVentureBeatの報道による。同紙によれば、APIの上限は毎分3,000リクエスト・400万トークンで、組み込みのウェブ検索は1,000回あたり2.50ドルが別にかかる。開発者ブログは、音声を使う用途では、提供先ごとに音声に対応しているかを確かめるよう求めている。消費者向けのアプリについて、MediaPostは、Wonderを使うには月額20〜100ドルの有料契約が必要だと伝えた。Metaのエージェント戦略の流れは、端末側の動きを扱ったMuse Charmの記事でも取り上げた。
性能は誰が測ったか──Metaの自己申告と第三者の指数を分けて読む
発表のたびに出てくる「最先端の性能」という表現は、誰がどの条件で測ったかで重みが変わる。公式ブログには具体的なスコアの記載がなく、数値はモデルカードとグラフに回されている。VentureBeatが報じたMetaの公表値の一部を、比較相手とあわせて抜き出した。同紙は、この表には第三者の評価とMeta自身の評価が混在しており、コーディングの比較では異なるツールを使ったものもあるとして、厳密に統制された比較とは見なさないよう注意している。
| 評価(Meta公表値) | Wonder Full | Wonder | GPT-6 Astra | Opus 5.5 |
|---|---|---|---|---|
| SWE-Marathon(長時間のコーディング) | 57.5 | 53.1 | 42.5 | 46.3 |
| Harvey LAB-AA(法務) | 13.1 | 10.0 | 8.6 | 4.2 |
| Terminal-Bench 4.0-AA | 57.1 | 52.0 | 59.1 | 59.6 |
| HealthBench Pro | 62.3 | 60.5 | 65.3 | 65.6 |
Metaの公表値でも、すべての項目でWonderが勝っているわけではない。長時間のコーディングと法務では上回るが、ターミナル操作と医療分野ではGPT-6 AstraとOpus 5.5が上だ。TechCrunchによれば、記憶と継続学習を測るMemoryBenchでは、WonderがFable、Opus、Astraを上回ったとMetaは主張している。公式ブログが打ち出す「Active Memory」(会話をまたいで文脈を保つ機能)と対応する主張だが、これもMetaの測定である。
第三者による数字としては、Artificial Analysisの総合指数「Intelligence Index」がある。Muse Wonderのページではスコアが52、Opus 5.5のページでは58だった。VentureBeatが引用した一覧では、Wonder Fullが56、GPT-6 AstraとGemini 4 Argonがともに53となっている。ただし、これは英語中心の汎用的な課題の平均だ。日本語のSNS投稿の要約や、ブランドのトーンに合わせた文章を作る力を直接測ったものではない。自社の用途での検証は、どの評価機関もまだ済ませていない。
単価は横並び──月次レポートを想定して費用を計算し直す
Muse Wonderの料金は、競合モデルとの比較で見ると位置づけがはっきりする。各社の公式の価格ページで、10月17日時点の標準料金を確かめた。WonderとOpus 5.5は、入力・出力・キャッシュの読み出しまで同じ料金だった。Gemini 4 Argonは11月30日までは半額で、12月1日からWonderと同じ料金になる。
| モデル | 入力 | キャッシュ読み出し | 出力 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| Muse Wonder | 4ドル | 0.20ドル | 20ドル | Meta開発者ブログ |
| Claude Opus 5.5 | 4ドル | 0.20ドル | 20ドル | Anthropic価格ページ |
| Claude Sonnet 5.5 | 2ドル | 0.10ドル | 10ドル | Anthropic価格ページ |
| GPT-6 Astra(入力27.2万トークン以下) | 10ドル | 1ドル | 50ドル | OpenAI価格ページ |
| Gemini 4 Argon | 2ドル(12月1日から4ドル) | 0.10ドル(同0.20ドル) | 10ドル(同20ドル) | Google価格ページ |
この単価で、事務所が所属クリエイター30人分の月次レポートをAIに下書きさせる場合を計算した。1人分の入力は、投稿の実績データ、コメントの抜粋、前月のレポートを合わせて20万トークンとし、出力は2万トークンとした。思考の過程も出力として課金されるモデルが多いため、出力が6万トークンに膨らむ場合もあわせて示す。あくまで本稿が置いた仮定で、キャッシュとバッチ処理の割引は入れていない。
| 単価(入力/出力) | 該当するモデル | 出力2万トークン/人の月額 | 出力6万トークン/人の月額 |
|---|---|---|---|
| 2ドル/10ドル | Sonnet 5.5、Gemini 4 Argon(11月30日まで) | 18ドル | 30ドル |
| 4ドル/20ドル | Muse Wonder、Opus 5.5、Gemini 4 Argon(12月1日から) | 36ドル | 60ドル |
| 10ドル/50ドル | GPT-6 Astra | 90ドル | 150ドル |
計算から言えることは2つある。1つは、この規模の作業では、どのモデルを選んでも月の費用は数十ドルから150ドル程度に収まることだ。費用より、出来上がった下書きを人が直す時間のほうが、総コストを大きく左右する。もう1つは、同じ単価の中では出力の量が費用を分けることだ。Artificial Analysisの測定では、評価課題1問あたりの費用は、Wonderが4.52ドル、Opus 5.5が5.98ドルだった。単価が同じでも、Opus 5.5のほうが多くのトークンを出力したためである。そのぶん、総合スコアはOpus 5.5が高い。「安く済むか」と「直す手間が少ないか」は、自社の題材で試して比べるしかない。Gemini 4 Argonの料金の読み方はGemini 4 Argonの記事で、レポートをAIに任せる範囲はClaudeのDashboardsを扱った記事で整理した。
「Wonder FullはAPI不可」が分岐になる──月額制と学習設定に注意
導入判断で最も大きな分かれ目は、上位版のWonder Fullを使いたいかどうかだ。Wonder FullはAPIで提供されないため、自社のツールや業務の仕組みに組み込むことはできない。使えるのは、Muse Codeを契約した人が、その画面の中で作業する場合に限られる。VentureBeatによれば、Wonder Fullを含むプランは月50ドルのPower Usageと、月200ドルのMaximum Usageの2つだ。開発者ブログは、Maximum Usageの利用枠をEveryday Usageの80倍とし、5時間ごとと週ごとに利用枠がリセットされるとしている。
見落とせないのが、データの扱いだ。VentureBeatによれば、Muse Codeの契約では「Contributor mode」が初期設定になっている。このモードでは、送った内容をMetaが今後のモデルの改善に使える。設定はオフにできるが、効くのはオフにした後に送る内容だけだという。一方、従量課金のAPIは「Standard mode」でしか提供されず、送った内容は学習に使わないとMetaは説明している。審査に通った組織には、データを保存しない設定(ゼロデータ保持)もある。クライアントの未公開の施策やクリエイターの契約条件を扱う事務所が、Muse Codeを契約したまま業務の資料を貼り付けると、意図せず学習に回る恐れがある。
整理すると、APIで業務の仕組みに組み込むならWonder、個人の作業環境で最上位の性能を試すならWonder Fullという分け方になる。Wonder Fullを試すなら、契約したその日にContributor modeをオフにする手順を、担当者の作業手順に入れておきたい。エージェントにどこまで権限やデータを渡すかの考え方は、Gemini agentの権限を扱った記事でも整理している。
事務所・ブランドのAI選定ルール──Wonderを試す前に決めておくこと
新しいモデルが出るたびに乗り換えを検討すると、検証の手間が積み重なる。単価がほぼ横並びになった今、選定の基準は「どれが一番賢いか」から「自社の作業で、どの経路なら安全に、少ない手直しで使えるか」に移っている。Wonderに限らず使える判断の手順を、公式資料と今回の再計算をもとに本稿が整理した。
| 確認すること | Muse Wonderの場合(10月17日時点) | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 使える経路 | WonderはAPIとMuse Code。Wonder FullはMuse Codeのみ | 業務の仕組みに組み込むならAPIで使えるモデルに限る |
| データの扱い | APIは学習に使わない。Muse Codeは学習に使う設定が初期値 | クライアントの資料を扱う作業はAPIに限るか、設定を変えてから使う |
| 性能の根拠 | Metaの公表値と、Artificial Analysisの総合指数がある | 自社の課題10〜20件で、手直しの量を比べてから決める |
| 費用 | Opus 5.5と同じ単価。出力量はモデルによって違う | 単価ではなく、1件あたりの実費と手直しの時間で比べる |
| 日本での提供 | 日本での提供について公式の発表は見当たらない | 契約と請求の条件を確かめるまで、本番の業務には使わない |
| 止まったときの備え | 公開から数日で、安全性の報告書は「近日公開」とされている | 別のモデルに切り替えられるよう、指示文と手順を特定のモデルに依存させない |
最後の項目は、過去にも現実の問題になった。発表から間もなくモデルが止まった例は、Claude Fable 5の停止を扱った記事で取り上げている。Wonderは開発者ブログで「New」と表示された新しいモデルで、公式ブログによれば、安全性の詳しい報告書はまだ公開されていない。重要な業務をすぐに1つのモデルへ寄せるより、いま使っているモデルと並べて検証する期間を設けるほうが安全だ。
Wonderを試す価値があるのは、長い文脈を保ったまま何段階もの作業を進める用途だ。Metaは、記憶と、目標に向けて作業を続ける力を前面に出している。MediaPostによれば、Metaでエージェントの研究を率いるAlexandr Wang氏も、作業が行き詰まったときに別の方法を試すよう訓練したと語っている。複数のクリエイターの実績データを読み込んで下書きを作るような作業は、検証の対象として向いている。一方、短い文章を大量に作るだけなら、単価が半分のモデルで十分な場合が多い。GPT-6 AstraとFable 5.1を並べたGPT-6 Astraの記事と合わせて読むと、用途ごとの選び分けを考えやすい。
今決めておくことは3つある。1つ目は、Wonderを試す作業を選び、いま使っているモデルと同じ題材で比べることだ。2つ目は、Muse Codeを契約する場合に、学習の設定を誰がいつ確かめるかを決めること。3つ目は、日本での提供と、Gemini 4 Argonの12月の値上げを踏まえて、来月以降のモデルの組み合わせを見直す時期を決めることだ。料金もプランも公開から数日の段階で、変わる可能性がある。Metaの開発者向け資料と各社の価格ページを、節目ごとに確かめながら判断したい。
本記事は、株式会社TORIHADAが運営するクリエイターエコノミー専門メディア「CREATORS POST」がお届けしました。最新のマーケティング・クリエイター動向を、実務目線で発信しています。
この記事はAIを活用して書いています。



