Google DeepMindは2026年10月27日、新しい世界モデル「Genie 4」を発表した。世界モデルとは、文章や画像から、歩き回れる場面をリアルタイムに作るAIだ。Genie 4は、場面の映像と同時に、環境音、音楽、キャラクターのせりふを生成する。DeepMindは、Genie 4を「音声をネイティブに生成する、初めてのリアルタイム世界モデル」と説明している。シミュレーションの途中でも、天気を変える、カメラを動かす、人や物を足すといった操作を、文章の指示でできる。TechCrunchによれば、場面の一貫性を保てるのは最大2分で、前のモデルの2倍だ。
ただし、いま使えるのは、Googleが選んだ「信頼できるテスター」だけだ。提供は研究プレビューとして始まった。Googleの公式記事によれば、次の段階では、Google AI Ultraの加入者がWebアプリ「Project Genie」で使えるようになる。Gemini APIとGoogle AI Studioの早期アクセスのパートナーにも提供される。どちらも「近日中」とされ、日付は示されていない。提供する国と地域も書かれていない。日本でGenie 4を使える時期は発表されていない(10月29日時点)。
本稿では、Genie 3の研究発表、Project Genieの製品版、Genie 4の公式資料を読み比べ、仕様の違いを表にまとめる。そのうえで、誰がいつ使えるようになるかを整理する。最後に、提供段階と用途(企画ラフ、素材、公開)を組み合わせて、ゲームやXRの案件で事務所・D2Cが「いま使える部分」と「まだ使えない部分」を見分ける基準を示す。
何が発表されたか──公式2本と報道で読むGenie 4
Genie 4の発表は、DeepMindのブログとGoogleの公式記事の2本に分かれている。詳しいのはDeepMindのブログで、Raia Hadsell氏、Diego Rivas氏、Hang Qi氏が署名している。Googleの公式記事は短い告知で、デモはDeepMindのブログに任せている。どちらの記事にも、解像度、フレームレート、生成できる時間の数字はない。「最大2分」はTechCrunchの報道によるもので、DeepMindのGenieのモデルページは「数分間の連続したやりとり」と書いている。
DeepMindのブログによれば、Genie 4は2つの点でGeminiのモデルを使っている。1つは、Gemini Omniが現実の見た目や動き方にシミュレーションを合わせること。もう1つは、ほかのGeminiのモデルが推論を受け持ち、場面のつながりを保つことだ。利用者が指示を出していない間も、Geminiが場面を見て、指示を場面に合わせて調整する。物理の表現では、空気の流れや物の衝突を例に挙げている。キャラクターは周りの環境に反応して自然に動き、リアルタイムに操作できるという。デモには、Apptronikの人型ロボット「Apollo」がチェッカーで遊ぶ場面がある。Gemini 4 Argonが作業を段階に分け、Genie 4がそれをリアルタイムに再現した。
制作の現場にとって大事なのは、テスターがどう使っているかだ。DeepMindのブログは、4つの使い方を挙げている。クリエイターと技術者は、プリビズ(撮影前の映像の試作)とアイデア出しのための素早い「ドラフトモード」として試している。ゲーム開発者は、最初のアイデアから探索できるプロトタイプまでを「数秒で」作るために試している。ほかには、1枚の古い報道写真から当時の場面を再現する使い方や、企業が訓練用の状況を素早く作る使い方がある。Rivas氏はTechCrunchに対し、リアルタイムであることは、創作の流れを止めたくない場面で最も価値を持つと語った。
限界も明記されている。短いセッションではつながりを保てるが、長く動かしたとき、複雑な指示で何度も直したとき、場面の中を動き回ったときには、細部や物の位置がずれることがある。複雑な物理のやりとり、音声の正確さ、読める文字の描写、空間の正確さ、長時間の一貫性は、まだ研究中だという。生成された映像と音声には、すべて電子透かしのSynthIDが入る。
Genie 3・Project Genie・Genie 4の違いを表で整理する
「Genie 3は60秒、Genie 4は2分」とまとめられることが多いが、資料を読み比べると、この比べ方は正確ではない。2025年8月のGenie 3の研究発表は、「数分間」一貫性を保てると書いていた。一方、2026年1月に始まった製品版のProject Genieでは、1回の生成が60秒までに制限された。60秒は研究上の性能ではなく、製品の上限だ。下の表は、3つの資料と報道を項目ごとに並べたものだ。
| 項目 | Genie 3(研究発表) | Project Genie(Genie 3を使う製品版) | Genie 4 |
|---|---|---|---|
| 発表日 | 2025年8月5日 | 2026年1月29日(米国で開始) | 2026年10月27日 |
| 解像度・フレームレート | 720p、毎秒24フレーム | 記載なし | 記載なし |
| 時間 | 「数分間」一貫性を保つ。記憶は最大1分前まで | 1回の生成は60秒まで | 最大2分で、前のモデルの2倍(TechCrunch)。公式は「数分間の連続したやりとり」 |
| 音声 | 記載なし | 記載なし | 環境音、音楽、せりふを同時に生成 |
| 途中で場面を変える操作 | 文章で天気を変え、物やキャラクターを足せる | 搭載されていない(8月に発表された機能の一部は未搭載) | 文章で天気、カメラ、人や物を変えられる。Geminiが指示の合間も場面を調整する |
| 組み合わせるモデル | 記載なし | Nano Banana Pro、Gemini | Gemini Omniほか、Geminiのモデル |
| 提供の範囲 | 一部の研究者とクリエイターへの限定プレビュー | 当初は米国のAI Ultra加入者(18歳以上)。5月19日から世界の対象者へ順次 | 信頼できるテスターへの研究プレビュー。AI UltraとAPIは近日中 |
表から分かるのは、Genie 4の「2分」をそのまま製品の上限と読むのは早いということだ。Genie 3でも、研究上は数分間、製品では60秒と、数字に差があった。Genie 4がProject Genieに載ったときに、1回の生成を何秒までにするのかは発表されていない。TechCrunchの「前のモデルの2倍」は、Project Genieの60秒から見れば計算は合う。ただし、Genie 3の研究発表の「数分間」から見れば合わない。企画書に「2分の世界を作れる」と書く前に、製品版の上限を確かめる必要がある。もう1つの違いは音声だ。環境音とせりふが映像と同時に出るので、無音の映像に音を後から付けていた試作の工程は短くなる可能性がある。
誰が、いつ使えるのか──3つの提供段階と日本の状況
Genie 4の提供は、3つの段階に分かれている。いまの段階は、Googleが選んだテスターだけが使える研究プレビューだ。次の段階として、消費者向けのProject Genieと、開発者向けのAPIが並んでいる。事務所やブランドが自分で申し込める入口は、Project Genieの順番待ちリストと、AI Ultraへの加入だ。
| 段階 | 対象 | 時期 | 日本の状況(10月29日時点) |
|---|---|---|---|
| 研究プレビュー | 信頼できるテスター(選ばれた人のみ) | 10月27日から | テスターの国は公表されていない |
| Project Genie | Google AI Ultra加入者。現行のProject Genieは月200ドルのプランが対象で、18歳以上 | 「近日中」(公式)。TechCrunchは「数週間のうちに」と報道 | Project Genie自体は5月19日から世界の対象者に順次提供。Genie 4が日本の加入者に来るかは発表されていない |
| Gemini API・Google AI Studio | 早期アクセスのパートナー | 「近日中」 | パートナーの条件、料金、提供地域は発表されていない |
Project Genieは、5月19日のGoogleの発表で、米国の外にも広がった。対象は、世界の「AI Ultra 200ドル」の加入者のうち、条件を満たす18歳以上の人だ。同じ日のプラン改定の発表で、最上位のAI Ultraは月250ドルから200ドルに下がり、月100ドルのAI Ultraが新しく加わった。Project Genieは、200ドルのプランの機能として載っている。100ドルのプランの欄にはない。日本の加入者が使う場合も、どの料金のプランにProject Genieが含まれるかを、Googleの日本のプランのページで確かめておきたい。なお、Google AI Ultra for Businessの利用者は、1月の開始時に対象から外されていた。会社の契約でWorkspaceのプランを使っている場合は、使えるかどうかを個別に確かめる必要がある。
開発者向けのGemini APIとGoogle AI Studioでの提供は、早期アクセスのパートナーに限られる。料金、生成の上限、書き出せる形式は、どの資料にも書かれていない。自社のアプリやイベントにGenie 4を組み込む企画は、APIの条件が分かるまで、提案の前提にしないほうがよい。
「提供段階×用途」で判断する──企画ラフ・素材・公開
Genie 4をゲームやXRの案件で使うかどうかは、性能だけでは決まらない。誰が使えるかという提供段階と、作ったものを何に使うかという用途を組み合わせて考えると、判断しやすい。用途は3つに分けられる。社内とクライアントの間で見せる「企画ラフ」、制作物の一部に組み込む「素材」、そのまま視聴者に届ける「公開」だ。下の表は、本稿が公式資料の仕様をもとに整理した目安で、実際に使って確かめた結果ではない。
| 用途 | 研究プレビュー(いま) | Project Genie(AI Ultra、近日中) | Gemini API(早期パートナー、近日中) |
|---|---|---|---|
| 企画ラフ(世界観の共有、プリビズ、ゲームの遊びの試作) | テスターでなければ使えない。DeepMindのデモ映像を参考に見せるところまで | 最も向いている。作った世界を動画として書き出せるかは、Genie 4の版で確かめる(Genie 3の版では書き出せた) | 自社のツールに組み込み、企画会議で何度も作り直す使い方が考えられる。条件が出るまで保留 |
| 素材(広告動画やXR体験の背景、効果音) | 使えない | 使う前に、商用利用の条件と、SynthIDが入ることをクライアントに説明できるかを確かめる。本稿で確認した発表資料には、商用利用の条件は書かれていない | 料金と利用条件が出てから判断する |
| 公開(視聴者がその場で世界を操作する体験) | 使えない | Project Genieは試作品(Google Labsの実験的な製品)なので、イベントやキャンペーンの本番には向かない | 可能性はあるが、ずれや音声の正確さの限界を前提にした設計が要る |
表のとおり、近いうちに現実的なのは、Project Genieで企画ラフを作る使い方だ。ゲームの案件では、遊びの手触りや世界観を、文章の企画書より早くクライアントと共有できる。XRの案件では、ヘッドセット向けに作り込む前に、場面の雰囲気を確かめる試作になる。XRの端末では、Metaが2027年春に発売を予定しているVR Glassesの記事で、Unityでの開発の準備を整理した。Genie 4の出力は、ゲームエンジンで使える3Dデータではなく、映像と音声だ。本番の制作は、公式MCPに対応したUnreal Engine 5.8のような既存のエンジンで続けることになる。エンジンを操作するAIは、GPT-6 Astraの記事で扱った。
素材と公開には、まだ超えるべき壁が多い。DeepMind自身が、長く動かしたときのずれ、読める文字の描写、音声の正確さを限界として挙げている。ブランドの商品名やロゴを世界の中に正しく出すのは、今の段階では難しいと見たほうがよい。生成した映像と音声には、すべてSynthIDが入る。EUではAI生成物の表示が法律の義務になっており(EU AI法第50条の記事)、公開するならAI製と表示する運用が前提になる。
今のうちに事務所・D2Cが決めておくこと
Genie 4は、まだ多くの人が触れない段階にある。それでも、Project Genieに載れば、200ドルのプランの加入者はすぐに試せるようになる見込みだ。提供が始まってから社内のルールを考えると、最初の案件に間に合わない。準備として決めておけることは、次のとおりだ。
- 誰が試すか:AI Ultraの200ドルのプランに加入する担当者を決め、Project Genieの順番待ちリストに登録しておく。会社の契約で使えるかも確かめる
- 企画書での書き方:「2分」「音声付き」をクライアントに約束しない。製品版の上限が出るまでは、参考のデモとして見せるにとどめる
- 入れてよい情報:発売前の商品やクライアントの未公開情報を、指示文や元の画像に使ってよいかを、秘密保持の契約に照らして決めておく
- 二次利用の扱い:生成した映像を、提案資料の中だけで使うのか、SNSや広告に出すのかを分ける。公開する場合の権利の整理は、二次利用込みのPR案件で決めるべき7項目の記事の考え方が使える
- AI製の表示:SynthIDが入ることを前提に、公開するときのAI製の表示とPR表記をセットで決めておく
- APIの条件を確かめる:Gemini APIの料金、上限、書き出せる形式が発表されたら、自社のツールに組み込むかを判断する
DeepMindのKulkarni氏はTechCrunchに対し、今後は言語モデルの推論とピクセル単位のシミュレーションを組み合わせた「ハイブリッドな世界モデル」が増えると語った。Geminiが話の筋を考え、Genieが世界を描く分担だ。そうなれば、世界モデルは企画ラフの道具から、体験そのものを作る道具に近づく。ただ、それは研究の方向性で、決まった予定ではない。いま事務所・D2Cにできるのは、Project Genieで企画ラフを作る準備をしておくこと、そして素材と公開は利用条件が出るまで待つことだ。
本記事は、株式会社TORIHADAが運営するクリエイターエコノミー専門メディア「CREATORS POST」がお届けしました。最新のマーケティング・クリエイター動向を、実務目線で発信しています。
この記事はAIを活用して書いています。



