Robloxは2026年9月11日(米国時間)、開発者会議「RDC 2026」に合わせて、クリエイター向けの新しい支払い口座「Roblox Wallet」と、Walletに紐づくカード「Roblox Card」を発表した。公式Developer Forumの告知によれば、2026年12月から、米国に住む18歳以上の独立クリエイター(個人事業主)が任意で申し込むと、収益を毎営業日、米ドルで自動的に受け取れるようになる予定だ。あわせて、これまでRobuxを現金に換える唯一の窓口だったDevEx(Developer Exchange)からは段階的に移行し、米国では2027年半ばに終了を始める予定とされた。
読者に関わる点は3つある。ひとつ、Walletを開くと、それ以降の収益はRobuxではなく米ドルで支払われ、Robuxが必要な場合は1 Robuxあたり0.0038ドルで買い戻す形になる。ふたつ、「毎営業日払い」といっても、取引ごとに最長30日の保留期間がある。みっつ、対象は当面米国だけで、日本での提供時期は発表されていない(10月5日時点)。米国以外ではDevExがしばらく残る。本稿では、同じ収益額をDevExで換金した場合と、Walletで受け取ってRobuxを買い戻した場合とで再計算し、日本の事務所やゲームUGCチームが今やることと待つことを分ける。
何が発表されたか──Wallet、Card、DevExの移行予定
今回の発表は、新しい機能の追加にとどまらない。Robloxでクリエイターが報酬を受け取る仕組みそのものを、Robuxで受け取って申請して換金する形から、米ドルで自動的に受け取る形に置き換える計画である。告知とRobloxのNewsroomの記事から、時期と対象を整理しておく。
WalletはCreator Hubから使う決済口座で、提供開始時は任意の申し込み制になる。支払いのレートは現行のDevExのレートと同じとされた。米国での決済サービスは、送金業の免許を持つAirwallexの米国法人(Airwallex US, LLC)が担う。Roblox Cardは、Walletの残高の範囲でだけ使えるデビット型のカードで、告知は「与信や貸付はなく、クレジットカードではない」と説明している。Newsroomによれば、Cardの提供は2027年に始める予定だ。2027年には、グループが持つWalletや法人化した事業者、保護者の同意を得た13歳以上のクリエイターへの拡大、現地通貨による海外展開、一部の市場でのCard提供も予定されている。
| 時期(いずれも予定) | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 2026年12月 | Walletの提供開始(任意の申し込み制)。毎営業日、米ドルで自動支払い | 米国に住む18歳以上の独立クリエイター(個人事業主) |
| 2027年 | Roblox Cardの提供開始。グループ所有・法人のWallet、保護者同意つきの13歳以上、現地通貨での海外展開 | Cardは「一部の市場」。海外展開の国・地域は示されていない |
| 2027年半ば | 米国でDevExからの移行を開始 | 米国 |
| 未定 | 各地域のDevEx終了日は、その地域でWalletの展開が完了した時点で公表 | 米国以外(日本を含む) |
規模の目安も示された。Newsroomによれば、クリエイターがRobloxで得た収益は2013年以降の累計で50億ドルを超え、2026年6月30日までの12か月では約17億ドルだった。支払いの仕組みを入れ替える影響は、これだけの金額に及ぶ。
DevExとWalletの違い──「毎営業日」と「最長30日」の関係
見出しの「毎営業日払い」だけを見ると、入金が劇的に早くなるように思える。ただ、実際の資金の流れは、支払いの頻度と保留期間の両方で決まる。現行のDevExの条件は、Roblox公式のDevExのドキュメントに書かれている。両者を並べると次のようになる。
| 項目 | DevEx(現行) | Wallet(12月開始予定) |
|---|---|---|
| 受け取る通貨 | Robuxで受け取り、申請して米ドルに換金 | 開設後の収益は米ドルで支払い |
| 頻度 | 完了した申請は暦月に1回まで | 保留期間を過ぎた分を毎営業日に自動で支払い |
| 最低額 | Earned Robuxで3万(標準レートで114ドル) | 告知に最低額の記載なし。銀行への振替は「低い手数料・最低額」とだけ記載 |
| 待ち時間 | 申請後、初回は約10営業日、2回目以降は約5営業日 | 取引ごとに最長30日の保留期間 |
| レート | 標準0.0038ドル、2025年9月5日より前の保有分は0.0035ドル、米国18+レート0.0054ドル | 現行のDevExのレートと同じ |
| 対象 | 13歳以上、認証済みメール、W-9またはW-8の提出など | 当初は米国の18歳以上の個人事業主のみ |
押さえておきたいのは、保留期間が最長30日あるため、開設直後の1か月はDevExと比べて大きく早くならない場合がある点だ。DevExでは、月末に貯まった分を申請すれば約5営業日で入金される。Walletでは、保留が明けた取引から順に入金される。保留期間は取引ごとに変わるため、収益の発生から入金までの日数は一律ではない。効いてくるのは2か月目以降で、毎日の売上が、保留期間を過ぎた順に毎営業日入ってくる状態になる。月1回まとめて受け取る形から、日々少しずつ入る形に変わることで、運営費の支払い時期と入金時期を合わせやすくなる。一方で、Walletを開くまでに貯めたRobuxはそのまま口座に残り、引き続きDevExで換金できる。
同じ収益で再計算する──標準レートなら手取りは変わらない
Walletを開くと、収益はRobuxではなく米ドルで入ってくる。そのため、広告費やテスト、Creator Storeの買い物などでRobuxを使っていたチームは、使う分を買い戻すことになる。告知によれば、Walletを持つクリエイターはDevExのレート(1 Robuxあたり0.0038ドル)でRobuxを買い戻せ、例として1万Robuxで38ドル、3万Robuxで114ドルが示されている。広告の購入にはWalletの資金を直接使うこともできる。ここでは、月に30万Earned Robuxを稼ぐ体験を仮に置き、そのうち5万Robux分をプラットフォーム内で使う前提で計算した。月の収益額と内訳は本稿の仮定で、レートは公式の数字である。
| ケース(本稿の仮定) | DevEx | Wallet+再購入 |
|---|---|---|
| A:30万Robux(すべて標準レート)を全額換金する | 30万×0.0038=1,140ドル | 1,140ドルを受け取る |
| B:Aのうち5万Robuxをプラットフォーム内で使う | 25万を換金して950ドル。5万Robuxは手元に残す | 1,140ドルを受け取り、5万Robuxを190ドルで買い戻す。残りは950ドル |
| C:30万のうち10万が米国18+レートの対象で、5万Robuxを使う | 全額を換金すると1,300ドル(20万×0.0038+10万×0.0054)。5万Robuxを残すと、換金していれば190〜270ドルになった分を手放す | 18+レートも同じ扱いなら1,300ドルを受け取り、5万Robuxを190ドルで買い戻す。残りは1,110ドル |
ケースAとBからわかるとおり、収益がすべて標準レートであれば、Walletで受け取って買い戻しても、DevExで一部を残して換金しても、手取りは1ドルも変わらない。買い戻しのレートが換金のレートと同じだからだ。つまり、Walletへの切り替えで手取りの水準が変わるわけではない。変わるのは入金のタイミングと、Robuxを使う場合の会計上の流れ(いったん米ドルで受け取り、買い戻して使う)である。
差が出るとすれば、ケースCのように米国18+レートの収益を含む場合だ。18+レートのドキュメントによれば、0.0054ドルのレートは2026年6月8日から適用されている。対象は、年齢確認を済ませた米国の18歳以上のプレイヤーによる、デベロッパー製品・パス・サブスクリプション・プライベートサーバーへの支出で、アバターの条件などを満たした体験に限られる。Walletで18+分が0.0054ドルで支払われ、買い戻しは0.0038ドルのままなら、プラットフォーム内で使う分の実質的な原価は1 Robuxあたり0.0038ドルに揃う。ただし、告知は支払いのレートを「現行のDevExのレートと同じ」とするだけで、18+レートが同じ形で適用されるかは、本稿では確認できなかった。18+市場の経緯はRoblox DevEx大幅増&18+市場の解禁の記事で扱っている。
日本の事務所・ゲームUGCチームへの影響はいつ来るか
日本のクリエイターにとって、12月の開始はまだ直接の変化にならない。Walletの対象は米国に住む個人事業主に限られ、告知は米国以外の地域ではDevExをより長く残すとしている。各地域のDevEx終了日は、その地域でWalletの展開が完了した時点で公表される予定だ。現地通貨での海外展開は2027年の予定に含まれているが、国・地域は示されていない。日本での提供時期も発表されていない(10月5日時点)。
そのため、日本で予想される流れは「米国でWalletが始まり、2027年に海外展開が始まり、日本で展開が完了した後に、日本のDevEx終了日が公表される」という順番になる。少なくとも、日本のDevEx終了日が公表されるまでは、日本のクリエイターはDevExで換金できる。ただし、事務所が気にすべきなのは受け取りの名義だ。当初の対象は個人事業主で、グループ所有や法人のWalletは2027年の予定である。告知も、それまでグループの収益はRobuxのまま支払われるとしている。グループで体験を運営し、収益をグループに集めている事務所では、法人・グループ向けの条件が出るまで、今の受け取り方を続けることになる。
税務の面にも触れておく。告知は、Walletに支払われる資金は一般に勤労所得(earned income)にあたると説明しているが、これは米国の税制を前提にした記述である。日本のクリエイターや事務所がDevExやWalletで得た収益をどう扱うかは、日本の税制に沿って税理士と確認する必要がある。現行のDevExでも、米国の納税者でない場合はW-8の提出が求められている。規制の面では、RobloxがEUのデジタルサービス法(DSA)で大規模プラットフォームに指定された件をEUのDSA指定の記事で取り上げた。プラットフォームが決済まで抱える流れは、今後の各国の規制とも関わってくる。
今やること、待つこと
日本の事務所にとって、今期中にWalletを使う判断を迫られる場面はない。ただし、2027年に日本が対象になってから慌てないよう、今のうちに準備できることはある。米国在住のクリエイターと組んでいる場合は、12月の開始がすぐに関わってくる。
今のうちにやっておけることは次のとおりだ。
- 所属・提携クリエイターの体験ごとに、収益を個人・グループ・法人のどの名義で受け取っているかを洗い出す
- 毎月プラットフォーム内で使っているRobux(広告、テスト、アセット購入)の量を把握し、Walletに切り替えた場合に0.0038ドルで買い戻す費用を見積もっておく
- 米国18+レートの対象になる収益がどれだけあるかを、DevExの支払い時の内訳で確認する
- クリエイターとのレベニューシェア契約で、分配の基準をRobuxで書いているか米ドルで書いているかを確かめ、両方に対応できる書き方にしておく
- 米国在住のクリエイターと組んでいる場合は、本人がWalletを選ぶかどうかと、入金のタイミングが変わることを、分配の締め日とあわせて話し合っておく
一方、待ってよいものもある。日本を含む海外展開の時期、グループ・法人向けWalletの条件、銀行への振替の手数料と最低額、18+レートの扱い、Cardの対象市場は、いずれもまだ示されていない。これらが出る前に体制を作り変える必要はない。日本でDevExがいつ終わるかは、Walletの展開が終わってから公表される仕組みなので、突然終わるおそれは小さい。
ゲーム内UGCの収益の仕組みが変わりつつあるのは、Robloxに限らない。Fortniteの還元率の変更はFortniteクリエイター経済2.0で、SNSが送金や決済まで担う流れは「SNSが財布になる」2026下半期で整理した。プラットフォームが収益の受け取りから支払いまでを自社の口座で完結させる動きは、ゲームとSNSで同時に進んでいる。事務所やゲームUGCチームにとって大事なのは、手取りの水準ではなく、受け取りの名義・タイミング・通貨が変わることを前提に、契約と資金繰りを組み直しておくことである。
本記事は、株式会社TORIHADAが運営するクリエイターエコノミー専門メディア「CREATORS POST」がお届けしました。最新のマーケティング・クリエイター動向を、実務目線で発信しています。
この記事はAIを活用して書いています。



