Anthropicは2026年10月21日(米国時間)、利用者が頼む前に自分から動く常駐型のエージェント「Claude Duet」を発表した。研究プレビューとして順番待ちで提供する。対象は、米国のProとMaxの利用者だ。MacRumorsによれば、Duetは毎朝、つないだアプリから重要な事項をまとめた短い報告を送る。さらに数時間ごとにアプリを確認し、対応が要るものがあれば知らせる。メッセージの送信、支払い、文書への署名、ファイルの削除の前には、利用者の承認を求める。
同じ種類の製品はすでに出ている。Metaは9月8日に「Muse」を、OpenAIは9月29日(米国時間)に「dots」を発表した。今回のDuetで、主要3社の「自分から動くAI秘書」が出そろった。3社とも、エージェントごとにクラウド上の専用のコンピューター(仮想マシン)とブラウザを用意し、利用者がPCを閉じても仕事を続ける。翌10月22日には1Passwordが「1Password for Agents」を発表した。AIエージェントにパスワードを見せずにログインさせる仕組みだ。
Duetは日本では提供されていない(10月23日時点)。一方、MuseはMetaの日本向けの発表によれば、10月23日(日本時間)に日本での提供が始まった。Slack、Gmail、カレンダーにつなぐ常駐型のエージェントは、事務所やブランドの運用担当者が年内に検討を始める段階に入った。本稿では、3社の提供条件を1つの表で比べる。続いて、「承認が必要な操作」と実行環境の設計の違いを並べる。そのうえで、問い合わせの一次対応、案件の日程調整、投稿前チェック、請求・支払いの4つの業務を、エージェントに任せてよいもの、人の承認を残すべきものに分ける。最後に、導入前に決めておく社内ルールを整理する。
3社の提供条件を比べる──対象国・プラン・料金・つなげるアプリ
まず、いま誰が、いくらで、どのアプリとつないで使えるのかをそろえておく。3社の製品はどれも「常駐して自分から動く」点で似ているが、提供の形はかなり違う。Duetは既存のClaudeの有料プランに含まれ、順番待ちで提供される。Museには無料の枠がある。dotsはChatGPTの上位プランに付く。以下は、各社の公式ページと報道を突き合わせて整理した表だ。数字は公表されている範囲に限り、書かれていない項目は「未公表」とした。
| 項目 | Claude Duet(Anthropic) | Muse(Meta) | dots(OpenAI) |
|---|---|---|---|
| 発表日 | 2026年10月21日(米国時間) | 2026年9月8日 | 2026年9月29日(米国時間、DevDay 2026) |
| 提供の形 | 研究プレビュー。順番待ち | 米国で順次提供。日本では10月23日(日本時間)から提供 | 対象プランに含まれる |
| 対象国 | 米国のみ | 米国、日本。米国では18歳以上(報道) | Proは欧州経済領域・スイス・英国を除く。Business PremiumはChatGPTの対応地域すべて |
| 対象プラン・料金 | ProとMax。TeamとEnterpriseはまだ対象外。追加料金は示されておらず、プランの利用枠を共有する | 無料の枠あり。報道ではPower(月20ドル)とMaximum(月100ドル) | Pro(月100ドル〜)とBusiness Premium(1席月125ドル、年払いなら月100ドル)で、1体目は追加料金なし。Enterpriseなどはベータで、管理者が有効にする |
| 使える場所 | iOS・Androidアプリ、Web(claude.ai) | iOS・Androidアプリ、Web、WhatsApp | ChatGPT、Slack、Microsoft Teams |
| つなげるアプリ | コネクタとプラグインで6,000超。製品ページにはGmail、Googleカレンダー、Slack、Shopify、QuickBooks、Docusignなどが並ぶ | メール、Instagramなど。小規模事業者向けではShopify、Slack、QuickBooks、Metaの広告アカウントなど | プラグインで4,000超 |
| 基盤のモデル | Claude Opus 5.5 | Muse Spark 1.3 | GPT-6 Astra |
出典は次のとおりだ。DuetはAnthropicの製品ページ、TechCrunch、MacRumorsによる。MuseはMetaの発表によるが、料金と年齢の条件は、TechCrunchの報道を引いたThe Neuronによる。日本での提供開始はMetaの日本向けの発表による。小規模事業者向けの連携は、9月29日のTechCrunchによる。dotsの対象地域はDataCampを、料金はdotsを解説した過去記事を参照した。
料金の比べ方には注意が要る。Duetは追加料金がない代わりに、裏側で行う定期的な確認も、Claudeのプランの利用枠を消費する。製品ページは、財務モデルや資料の作成のような大きな仕事ほど多くの枠を使うと説明している。数時間ごとにアプリを確認する常駐型の性質上、つなぐアプリを増やすほど、ふだんのチャットに使える枠は減ると考えてよい。dotsは、最初の1か月は利用枠を消費しないが、その後の条件は公表されていない。
「承認が必要な操作」と実行環境──3社の設計を並べる
常駐型のエージェントを業務に入れるとき、最も大事なのは「何を、誰の確認なしにやらせるか」だ。3社とも、メッセージの送信や支払いの前には利用者に確認するとしている。ただ、その線の引き方は違う。公表資料を並べると、承認の設計は3つの型に分かれる。Duetは、承認が要る操作と、やらない操作を提供側が決めている。Museは、外部への送信を別のエージェントに審査させる。dotsは、操作の種類ごとに利用者が4段階で決める。
| 項目 | Claude Duet | Muse | dots |
|---|---|---|---|
| 承認の設計 | 提供側が固定。メッセージの送信、支払い、文書への署名、ファイルの削除の前に承認を求める | メールの送信や購入などは承認が要る。外部へのアクセスはすべて「Sentinel」が審査する | 「Custom Rules」で、操作ごとに、確認なしで実行/依頼文で指示した場合のみ実行/毎回確認/人に任せる、の4段階から選ぶ |
| 設定にかかわらず、やらない・人に回す操作 | 証券の売買や口座間の送金はしない。カード番号や公的な身分証の提示を求められても、標準では応じない | 公表資料に、固定の禁止リストの記載はない | パスワードの変更と送金は常に人に回す。自分から行う調べものは読み取りのみ |
| 実行環境 | 専用のクラウドコンピューターと専用のブラウザ。承認、ログイン、安全確認もクラウド側で行う | 専用の仮想マシン「Muse Secure VM」。Sentinelは同じマシン上で、Museとは分けて動く | dotごとに専用のクラウドコンピューターとブラウザ。手元のPCへのアクセスは標準でオフ |
| 認証情報 | アカウントへのアクセスを渡しても、パスワードやログイン情報は見ない | パスワードと支払い手段は見ない。支払いはStripeのLinkが1回限りのカード番号を発行する | 対応サイトでは、モデルに見せない保存済みのパスワードでログインする |
| 作業の見え方 | やったこと・やっていることを確認し、方向を変えられる。やり取りは1つのスレッドにまとまる | 承認が要るときや状況が変わったときに知らせる | クラウドコンピューターを開いて、いつでも作業を見られる。予定の作業は一覧で確認できる |
この比較から見えるのは、承認の線を誰が引くかの違いだ。Duetの方式は、利用者が設定を誤る余地が小さい。その代わり、「この送信は確認なしでよい」といった調整はできない。dotsは細かく調整できるが、その分、どの操作をどの段階にするかを利用者の側で決め、管理する必要がある。Museは、エージェントが外に出す通信そのものを、別のエージェントが確かめる構造だ。どの方式でも、承認の対象にならない「読む」「まとめる」「下書きする」は、エージェントが自由に進める。業務を任せる範囲は、この「読むのは自由、外に出すのは承認」という共通の線を軸に考えると整理しやすい。
各社とも、限界を認めている。Anthropicの製品ページは、Duetがスレッドを読み違えたり、緊急度を見誤ったり、確認と確認の間に届いたものを見落としたりすることがあると書いている。The Neuronによれば、Metaはプロンプトインジェクション(外部の文章に紛れ込ませた指示でAIを操る攻撃)が未解決だと認めている。また、利用データは標準でモデルの学習に使われ、設定で止められる。過去記事によれば、OpenAIも、dotsのプロンプトインジェクション対策は完全ではないとしている。
1Password for Agents──「パスワードを渡す」から「ログインを承認する」へ
常駐型のエージェントに仕事を任せるとき、意外に重いのがログインの扱いだ。予約サイトや請求の管理画面にエージェントを入らせるには、これまでは誰かがパスワードを入力するか、どこかに渡すしかなかった。10月22日に1Passwordが発表した1Password for Agentsは、この部分を置き換える仕組みだ。
製品ページによれば、手順は3段階だ。エージェントがログイン画面で認証情報を求めると、利用者は自分の端末で、どのログイン情報が、なぜ必要かを確認する。そのうえで、許可するか拒否するかを選ぶ。許可すると、1Passwordがパスワードや確認コードを直接入力する。エージェントの側に伝わるのは「アクセスが許可された」ことだけだ。The Next Webによれば、エージェントは自分専用のデジタル鍵で1Passwordに身元を示す。対応するのは、MetaのMuse、OpenAIのChatGPT Workとdotsなどで、Claude Duetのログイン対応は近く始まる予定だ。1Passwordの最高製品責任者Aashish Tripathi氏は「エージェントは、頼まれた仕事ができればよい」と述べ、アカウントの先にあるものすべてに恒久的なアクセスを与えるべきではないとしている。
実務上の注意点は、対象のプランだ。製品ページでは、1Password for AgentsはIndividual(個人)とFamily(家族)のプランに含まれると書かれている。会社のチームで使うBusinessのプランについては、このページに記載がない。また、使えるかどうかは連携先、地域、端末、ログイン方法によって変わるとされている。事務所やブランドが、会社のアカウントのログインを社員個人の1Passwordで承認する形は、退職や異動のときに管理が切れやすい。会社として導入するなら、法人向けの対応が出るのを待つか、エージェントに渡すアカウントを業務用に分けておくのが安全だ。
4つの業務を仕分ける──任せてよい仕事、承認を残す仕事
では、クリエイター事務所やブランドの日々の業務のうち、どこまでをエージェントに任せられるか。各社の承認の設計と、公表されている限界を前提にすると、判断の軸は2つになる。1つは、外部の相手に何かが届くかどうか。もう1つは、間違えたときに取り消せるかどうかだ。この2つの軸で、問い合わせの一次対応、案件の日程調整、投稿前チェック、請求・支払いの4業務を、作業の単位に分けて整理した。
| 業務 | 任せてよい作業 | 人の承認を残す作業 | 任せない作業 |
|---|---|---|---|
| 問い合わせの一次対応 | 受信箱やフォームの問い合わせの分類、要点の整理、返信の下書き、担当者への振り分け | ブランドや取引先への返信の送信。条件や金額に触れる返信は特に確認する | 報酬の提示や合意、契約の可否の回答 |
| 案件の日程調整 | クリエイターと担当者のカレンダーから空き時間を洗い出し、候補日をまとめる | 相手への候補日の送信、カレンダーへの確定の登録 | クリエイター本人の私的な予定の扱いを、本人の同意なく決めること |
| 投稿前チェック | PR表示の有無、禁止表現の候補、ハッシュタグや固有名詞の表記ゆれの洗い出し | 指摘を踏まえた修正内容の確定と、ブランドへの提出 | 投稿の公開そのもの、薬機法・景表法上の最終判断 |
| 請求・支払い | 請求書と案件の一覧の突き合わせ、未入金・未請求の一覧づくり | 請求書の発行と送付 | 支払いの実行、口座情報の変更、送金先の登録 |
この表は、3社のどれを使っても成り立つ仕分けだ。「任せてよい作業」は、読む、まとめる、下書きするに当たる。3社とも承認なしで進める領域で、間違えても外には出ない。「人の承認を残す作業」は、各社が承認の対象としている送信や登録に当たる。dotsのように確認なしの実行に設定を変えられる製品でも、導入の初期は承認を外さないほうがよい。「任せない作業」は、承認の画面で一度確認するだけでは誤りを見抜きにくいものだ。後から取り消せないものもここに入る。支払いの実行については、Duetが口座間の送金をしない設計で、dotsも送金を常に人に回すとしている。各社の設計とも食い違わない。
投稿前チェックで任せられるのは、候補の洗い出しまでだ。PR表示や表現の最終判断は、法令と案件の条件を知る人が下す必要がある。何を確かめるべきかは、PR投稿で「書けない言葉」のチェックリストで法令別に整理した。エージェントに渡す確認の指示も、このチェックリストを元に作ると、見落としの範囲を人の側で把握しやすい。月次のレポートや提案資料の作成をClaudeにどこまで任せるかは、Claudeのダッシュボード・動画作成機能の記事で扱っている。
導入前に決める社内ルール──権限・承認・ログ
常駐型のエージェントは、つないだ瞬間から、受信箱やカレンダーを数時間ごとに読みにいく。試しに入れてみる前に、どのアカウントを、誰の名義で、どこまでつなぐかを決めておかないと、後から範囲を絞るのは難しい。dotsでは、アプリの接続を切っても、そのアプリから学んだ内容は消えない(過去記事による)。つなぐ前の判断が、そのまま残ると考えたほうがよい。決めておく項目を6つに絞った。
- つなぐアカウント:個人の受信箱ではなく、問い合わせ用・日程調整用など業務別のアカウントに限る。クリエイター本人の私的なアカウントはつながない
- 名義:誰の有料プランで動かすかを決める。Duetは現状、個人向けのProとMaxのみで、退職時にアクセスを止める手順も合わせて決める
- 承認者:送信、カレンダーの確定、請求書の発行ごとに、承認する人と代理の人を決める。承認の通知が個人のスマートフォンに届く点も踏まえる
- ログイン:パスワードはチャットに書かない。1Password for Agentsのように、パスワードを見せずにログインさせる仕組みを使うか、エージェント用のアカウントを分ける
- データの扱い:取引先の契約書や未公開の案件情報を読ませてよいかを決める。学習への利用の設定も確認する
- ログの確認:エージェントが何をしたかの履歴を、週に一度、承認者以外の人も見る。見落としや誤送信の兆しを早めに拾う
このうち、名義と承認者は、エージェントを「誰の部下として働かせるか」を決めることでもある。Googleは、エージェント1体ごとに社員のように管理される専用の身元を持たせ、AIの支出にはプロジェクトごとの上限を設けられるようにしている(Google Cloudの発表)。権限の渡し方の考え方は、Gemini agentの記事で整理した。常駐型のエージェントは便利だが、権限が個人の名義にひもづくかぎり、組織の業務に入れるときは、こうした身元と権限の管理が欠かせない。
日本での状況と、年内の動き方
日本で、いますぐ3社をそろって試せるわけではない。Museは10月23日(日本時間)に日本での提供が始まった。Metaの日本向けの発表によれば、メルカリ、マネーフォワード ME、チケットぴあとの連携も進めるという。一方、Duetは米国のみの提供で、日本での提供時期は発表されていない(10月23日時点)。dotsは、Proの除外地域が欧州経済領域、スイス、英国とされ、日本はそこに含まれていない。ただし、日本を名指しした提供の発表は確認できなかった。日本語での使い勝手は、まだ検証の材料がない。
したがって、年内の動き方は「本格的な導入」より「準備」になる。上の4業務の仕分け表と6つのルールを、社内の運用に合わせて書き直しておく。そうすれば、すでに使えるMuseでも、日本で提供が始まる製品でも、すぐに小さく試せる。製品を選ぶ軸は、性能よりも承認の設計だ。提供側が決めた線で安全に始めたいのか、自社で操作ごとに線を引きたいのかで、向く製品は変わる。Duetは研究プレビューの段階で、各社とも仕様を短い間隔で変えている。表の中身は、試す時点で改めて確かめる必要がある。
本記事は、株式会社TORIHADAが運営するクリエイターエコノミー専門メディア「CREATORS POST」がお届けしました。最新のマーケティング・クリエイター動向を、実務目線で発信しています。
この記事はAIを活用して書いています。



