インフルエンサーのPR投稿でトラブルになる表現は、実はかなり型が決まっている。化粧品で「シミが消える」、サプリで「血行が良くなる」、美顔器で「たるみが引き締まる」、そしてどの商材でも出てくる「海外で認証済み」「国が認めた」。これらは言い回しの巧拙の問題ではなく、薬機法・景品表示法・健康増進法という三つの法律が、それぞれ別の理由で線を引いている言葉だ。要点を先に言えば、①薬機法の広告規制の主語は「何人も」で、投稿するクリエイター本人も対象になる、②景表法のステマ規制の責任は広告主にあるが、投稿の中身が優良誤認なら広告主が措置命令を受け、投稿はまとめて削除対象になる、③「認証」「承認」「届出」は制度上まったく別物で、海外の承認は日本での効能表示の根拠にならない、の三点である。
この記事は、クリエイター事務所・MCN・ブランドのPR担当が、台本チェックや投稿前確認で使える「書けない言葉」の整理を目的にしている。根拠は消費者庁・厚生労働省・東京都保健医療局(薬務課)が公開している告示・通知・講習会資料と、e-Gov法令検索の現行条文に限り、一次情報で確認できた範囲だけを書いた。特定の商品名や企業名で「この表現がアウト」と断じるものではなく、事例も消費者庁が公表した資料の範囲にとどめている。法的助言ではない点は末尾に改めて記す。
なぜPR投稿は「広告」として審査されるのか──3つの法律の守備範囲
「個人の感想です」と添えれば大丈夫、という感覚はまだ現場に残っているが、規制の側から見るとPR投稿は最初から広告である。厚生労働省が示している薬機法上の広告の3要件は、顧客を誘引する意図が明確であること、特定の商品名が明らかにされていること、一般人が認知できる状態にあることの三つで、東京都保健医療局の講習会資料でも平成10年の医薬監第148号通知として紹介されている。商品名を出してフォロワーに見せるPR投稿は、この三つを自然に満たしてしまう。
そのうえで、どの言葉が問題になるかは法律ごとに理由が違う。薬機法は「その製品に効能効果をうたう資格があるか」を問う法律で、化粧品・医薬部外品・医薬品・医療機器の区分ごとに言える範囲が決まっている。景品表示法は「実際より良く見せていないか」「事業者の広告だと分かるか」を問う法律で、商材を問わず適用される。健康増進法は食品に限って「健康の保持増進効果について著しく事実に相違する表示」を禁じる。三つの法律の役割と主語、罰則を並べると次のようになる。
| 法律 | 問うこと | 広告規制の主語 | 主な制裁(確認できた範囲) |
|---|---|---|---|
| 薬機法(医薬品医療機器等法) | その製品に効能効果をうたう資格があるか(区分ごとの範囲) | 66条・68条とも「何人も」 | 85条:2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金。75条の5の2:対象商品売上額の4.5%の課徴金 |
| 景品表示法 | 実際より優良・有利に見せていないか、事業者の表示だと分かるか | 「事業者」(自己の供給する商品・役務の表示) | 措置命令、課徴金(売上額の3%、10年以内の再違反は4.5%)、48条:優良誤認・有利誤認の直罰として100万円以下の罰金 |
| 健康増進法65条 | 食品の健康保持増進効果が著しく事実と違わないか | 「何人も」 | 勧告・命令(同法に基づく) |
表の「主語」の列が、この記事で最も重要な部分だ。景表法は事業者、つまり広告主を縛る法律で、投稿を依頼されたインフルエンサーは直接の名宛人ではない。一方で薬機法66条1項は「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」と定めていて、主語に事業者という限定がない。健康増進法65条も同じ構造で、消費者庁のQ&Aは「食品の製造業者、販売業者等に何ら限定されるものではありません」と明記している。クリエイター本人が台本を読んだだけであっても、薬機法と健康増進法の世界では「言った人」が対象になりうる。
薬機法①化粧品──「56の効能」の外にある言葉は、たとえ本当でも書けない
化粧品のPR投稿がいちばん悩ましいのは、体感として本当でも言えない言葉が多いことだ。化粧品が広告でうたえる効能は、厚生労働省の通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)に列挙された56項目に限られている。この通知で追加された56番目が「乾燥による小ジワを目立たなくする」で、逆に言えば「小ジワが消える」「シワを改善する」は今も化粧品の範囲外だ。
56項目の言い回しには一定の型がある。「肌にはりを与える」「肌のキメを整える」「皮膚をすこやかに保つ」「肌荒れを防ぐ」「皮膚にうるおいを与える」「日やけを防ぐ」「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」のように、与える・整える・保つ・防ぐという動詞で、肌の状態を良く保つことまでを言う。治す・消す・改善する・若返るという、肌そのものを変化させる動詞は含まれていない。PR台本を見るときは、動詞に注目するだけでかなりの数を拾える。
| PR投稿で出やすい表現 | なぜ書けないか | 56項目の範囲での言い換え例 |
|---|---|---|
| シミが消えた/シミが薄くなる | 既にあるシミへの作用は56項目にない。「防ぐ」までが化粧品の範囲 | 日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ |
| シワが改善した/小ジワが消える | 化粧品は「乾燥による小ジワを目立たなくする」まで | 乾燥による小ジワを目立たなくする(この文言のまま) |
| 肌が若返る/アンチエイジング | 加齢の変化を戻す効能は化粧品にない | 肌にはりを与える/肌にうるおいを与える |
| ニキビが治った | 治療は医薬品の効能。医薬部外品でも「防ぐ」まで | (化粧品なら)肌を清浄にする/肌荒れを防ぐ |
| 誰でも必ず効果が出る/史上最高の保湿力 | 医薬品等適正広告基準が「確実である保証をするような表現」「最大級の表現」を禁止 | 使用感として「しっとりする」等、個人の感想と明示 |
表の最後の行は、効能の範囲とは別のルールだ。厚生労働省の「医薬品等適正広告基準」(最終改正 平成29年9月29日 薬生発0929第4号)は、効能効果や安全性について「それが確実である保証をするような表現」と「最大級の表現又はこれに類する表現」を禁じている。「絶対」「100%」「No.1の美白」といった強調語は、56項目の内側にいても、この基準で引っかかる。薬機法66条の「誇大」は、こうした基準に照らして判断されると理解しておくとよい。
薬機法②健康食品と雑貨──「効く」「治る」「血行」が言えない本当の理由
サプリメントや健康食品の台本で「効く」「治る」「血行が良くなる」を止めると、担当者から「食品なのに、なぜ薬の法律が出てくるのか」と聞かれることがある。答えは順番が逆で、そういう効能をうたった瞬間に、その食品は法律上「医薬品」と判断されるからだ。厚生労働省の昭和46年通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(薬発第476号、いわゆる46通知)は、疾病の治療または予防を目的とする効能効果と、身体の組織機能の一般的増強・増進を主たる目的とする効能効果を標榜する食品を、医薬品とみなす基準にしている。
46通知が挙げる例は具体的だ。疾病の治療・予防では「糖尿病、高血圧、動脈硬化の人に」「胃・十二指腸潰瘍の予防」「肝障害・腎障害をなおす」。組織機能の増強・増進では「疲労回復」「体力増強」「食欲増進」「老化防止」「若返り」「精力をつける」「新陳代謝を盛んにする」「血液を浄化する」など。東京都保健医療局の解説ページは、これに加えて「血液をサラサラにすると言われている〇〇を主原料に」のように含有成分の説明で効能を暗示する書き方や、「体質改善」といった名称、学説の引用による暗示も医薬品的効能効果に当たると整理している。承認を受けていない医薬品の効能を広告することは薬機法68条で禁じられており、この条文の主語もやはり「何人も」だ。
雑貨、つまり美顔器・マッサージ器具・磁気製品・健康器具・アクセサリーの類も、構造は同じである。医療機器として承認や認証を受けていない製品が、医療機器的な効能をうたえば、未承認医療機器の広告として68条の問題になる。東京都薬務課の講習会資料「雑貨等の広告について(薬事該当性)」は、遠赤外線製品を例に「疾病の治療、疾病の予防、疲労回復、筋肉のこりをほぐす、腰痛・肩こり・関節痛・炎症等の改善、冷え性等の体質の改善・変化、免疫機能の向上、新陳代謝を高める、若返り、むくみの改善」といった標榜は医療機器に該当すると示し、美容器具についても「シミ・ソバカスの除去」「たるみを引き締め小顔に」を問題例として挙げている。
| 商材 | PR投稿で出やすい表現 | 法律上の位置づけ | 言い換えの方向 |
|---|---|---|---|
| サプリ・健康食品 | 疲労回復に効く/老化防止/血液サラサラ/〇〇病の予防 | 46通知の医薬品的効能効果 → 無承認医薬品の広告(68条) | 成分名と含有量の事実、味・続けやすさ、「栄養補給」「健康維持」の範囲 |
| 健康食品 | 1週間で〇kg痩せる | 景表法7条2項の運用指針が「食べるだけで1か月に5kg痩せます」型の表示を、専門家の見解だけでは合理的根拠と認められない例として挙げる(優良誤認・不実証広告)。健康増進法65条の誇大表示にも当たりうる | 体重変化の数値は書かない。食事管理と併用した個人の記録に限定 |
| 美顔器・マッサージ器具(雑貨) | たるみ引き締め/血行改善/肩こり解消/むくみ改善 | 医療機器的効能 → 未認証医療機器の広告(68条) | 「肌を引き上げるようにケアする」「あんま・指圧の代用」のように使い方の説明にとどめる |
| スマートウォッチ等 | 血圧が測れる/睡眠の質が分かる/病気の兆候を検出 | 東京都資料はこれらの機能を医療機器と判断。雑貨で言えるのは運動管理目的の心拍・酸素飽和度まで | 「トレーニング強度の管理に」など運動目的に限定 |
ここで一つ注意したいのは、言い換えが「ごまかし」にならないことだ。46通知はただし書きで「栄養補給、健康維持等に関する表現はこの限りでない」としていて、食品として言える領域はちゃんと残されている。成分と含有量、味、続けやすさ、日々の食事にどう組み込んでいるか。効能の言い換えを探すより、効能を語らずに商品の良さを伝える構成に台本を作り直すほうが、結果的に安全で、視聴者にも自然に届く。
景品表示法──優良誤認・有利誤認・No.1表示・体験談、そして「PR」表記のルール
薬機法が「この製品にその言葉を言う資格があるか」なら、景表法は「言った内容が実際と釣り合っているか」を問う。景表法5条1号は品質・規格などについて実際より著しく優良と誤認させる表示(優良誤認)、2号は価格や取引条件について著しく有利と誤認させる表示(有利誤認)を禁じる。7条2項の不実証広告規制では、消費者庁が表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めることができ、運用指針によれば提出期限は原則として15日後、期限内に出せなければ不当表示とみなされる。効果を示す投稿は、投稿の時点で「15日で出せる根拠があるか」を問われる、と考えておくのが実務的だ。
制裁は2024年10月1日施行の改正で重くなった。消費者庁の景品表示法のページによれば、この改正で確約手続(事業者が是正計画を申請し認定されれば措置命令・課徴金納付命令を受けない仕組み)が導入され、あわせて現行法には、優良誤認・有利誤認を直接罰する48条(100万円以下の罰金)と、10年以内に課徴金納付命令を受けた事業者が再び違反した場合に課徴金の算定率を3%から4.5%へ引き上げる規定が置かれている。PR投稿の一件は小さくても、広告主側にとってはそこから事業全体の売上額に対する課徴金へつながる話である。
「No.1」と「体験談」は、PR台本で特に根拠が問われやすい二つだ。消費者庁が2024年9月26日に公表した「No.1表示に関する実態調査報告書」は、顧客満足度No.1などの表示が合理的根拠に基づかず事実と異なる場合は不当表示になるとし、合理的根拠と認められる要件として、比較する商品等が適切に選定されていること、調査対象者が適切に選定されていること、調査が公平な方法で実施されていること、表示内容と調査結果が適切に対応していることの四つを示した。報告書は、ヒアリング対象となった広告主のほとんどで表示の根拠が十分に確認されている様子がうかがわれなかった、とも指摘している。「売上No.1」「満足度98%」を台本に入れるなら、その四要件を満たす調査資料を広告主から預かってから、が順番だ。
そして2023年10月1日に施行されたステルスマーケティング規制である。景表法5条3号に基づく告示「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号)と、同年3月28日に消費者庁長官決定された運用基準が根拠だ。消費者庁のQ&Aは「規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)です。企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません」と明記している。
ただし、規制対象でないことと、投稿が無傷でいられることは別だ。広告主が措置命令を受ければ、その表示、つまり投稿そのものが問題の中心になる。ギフティングのように金銭を払わない依頼でも、事業者が投稿内容に関与していれば事業者の表示になりうる点は、ナノインフルエンサーへのギフティングが増えている今こそ確認しておきたい。同様に、Instagramで商品タグにアフィリエイトリンクを付けられるようになった投稿も、事業者の依頼に基づくなら同じ整理になる。
| 運用基準が「判別できる」とする例 | 運用基準が「判別困難」とする例 |
|---|---|
| 「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言による表示 | 大量のハッシュタグの中に「#PR」を埋もれさせる |
| 「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章による表示 | 動画で、一般消費者が認識できないほど短い時間だけ表示する |
| 投稿の冒頭や本文中など、消費者が認識できる位置・大きさでの表示 | 事業者の表示である旨を他の情報に紛れ込ませる |
運用基準の考え方は一貫していて、「PRと書いたか」ではなく「一般消費者が事業者の表示だと分かるか」を見る。冒頭数秒だけ、あるいは概要欄の最下部だけの「PR」は、書いてあっても判別困難と評価されうる。台本チェックでは、文言の有無より「サムネイルと冒頭3秒で、これが広告だと分かるか」を確認項目にしたほうが規制の趣旨に沿う。
「認証済み」「〇〇承認」の落とし穴──海外の認証、機能性表示食品の「届出」、ロゴの無断使用
信頼を補強したくて入れる一言が、いちばん危ない。「〇〇国で認証済み」「厚労省認可」「機能性表示食品として国が認めた」。この種の表現は、制度を正確に知っていれば書けないものが多い。まず日本の食品に関する制度を整理すると、消費者庁の「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月一部改定)は、個別に国の審査を受け表示を「許可又は承認」された食品を特定保健用食品、科学的根拠に基づいて事業者が表示する食品を機能性表示食品、国が定める基準に従って表示する食品を栄養機能食品と定義している。機能性表示食品は事業者が消費者庁に届け出る制度であって、国が有効性を審査して認めたものではない。「国が認めた」は特定保健用食品にしか使えず、機能性表示食品に使えば事実と異なる。
同じ留意事項は、「××国政府認可〇〇食品」「〇〇研究所推薦〇〇食品」のような表示を、健康保持増進効果を暗示的・間接的に表現するものの例として挙げている。海外の政府や機関の認可・推薦を持ち出す言い方自体が、健康増進法・景表法の審査対象に入るということだ。そして薬機法68条が禁じる「承認又は認証を受けていないもの」の広告における承認・認証は、同条が引く条文のとおり日本の薬機法上の手続きを指す。東京都薬務課の資料も、パルスオキシメータの例で「医療機器である旨暗示させるもの(海外で承認取得済 etc)」を医療機器と判断する要素に挙げている。海外の承認を持っていると書くことは、日本での販売や効能表示の根拠になるどころか、むしろその製品が医療機器であると自ら示す形になりかねない。
「認証」という言葉の使い方も、医療機器の制度を知ると整理できる。PMDA(医薬品医療機器総合機構)の資料が示すとおり、日本の医療機器はリスクに応じてクラス分けされ、一般医療機器は届出、管理医療機器は主に登録認証機関による認証、高度管理医療機器は厚生労働大臣の承認という別々の手続きを取る。「認証済み」は管理医療機器の第三者認証を指す言葉で、届出だけの一般医療機器や、そもそも医療機器でない雑貨には使えない。逆に本当に認証を受けた医療機器であっても、言える効能は認証された使用目的の範囲に限られる。
最後に、認証マークや第三者のロゴを投稿に載せる行為について。特定の認証制度のロゴには使用条件があり、認証機関やブランドの名称・ロゴを許諾なく用いれば、その表示自体が景表法上の優良誤認になりうるうえ、商標法など他の法律の問題にもなりうる。この記事では個別の制度名を挙げないが、チェックの原則は単純で、「そのマークをこの投稿に載せる権利を、広告主が文書で持っているか」を確認する。口頭で「取ってあるはず」は、根拠資料の15日ルールを思い出せば、確認済みとは言えない。
誰が責任を負うのか──措置命令の事例と、クリエイター本人にかかる「何人も」
「責任は広告主にある」は、景表法のステマ規制に限っては正しい。しかしPR投稿全体で見ると、責任は法律ごとに分かれて配られる。景表法の措置命令と課徴金は事業者に向く。薬機法66条・68条と健康増進法65条の「何人も」は、投稿したクリエイター本人にも向きうる。事務所やMCNは、契約上の管理責任と、所属クリエイターを法的リスクから守る立場の両方を負う。この分担を理解していないと、「広告主が確認したから大丈夫」という一言で薬機法の部分を見落とす。
ステマ規制の運用は、消費者庁の公表資料で日付と事業者名を確認できるものだけ挙げると、2024年11月13日に大正製薬株式会社に対し、同社のサプリメント「NMN taisho」に係る表示が景表法5条3号(ステルスマーケティング告示)に該当するとして措置命令が出され、2025年3月25日にはロート製薬株式会社のサプリメント「ロートV5アクトビジョンa」に係る表示について同じ根拠で措置命令が出ている。いずれもインフルエンサーによるSNS投稿が事業者の表示と認定された事例として知られる。
それ以前の2024年6月には医療法人のGoogleマップ上の口コミが最初の適用例になっており、ステマ規制はSNS投稿に限らず、事業者が関与した第三者の表示全般に及ぶことが実例で示された。事例は消費者庁の報道発表一覧で随時追加されるため、チェックリストの更新時に一覧を見る習慣をつけておくとよい。
これらの事例で、投稿したインフルエンサー個人に景表法上の処分が出たわけではない。だが処分を受けた表示にはインフルエンサーの投稿が含まれており、投稿は削除され、事業者名と商品名とともに公表資料に残る。クリエイター側から見れば、自分の名前で発信した内容が公的に「不当表示」と整理されるのであって、フォロワーとの信頼という面では十分に重い結果だ。インフルエンサーの認定資格制度が「責任ある発信」を軸に立ち上がった背景にも、この構造がある。
事務所で回す3段チェックフロー──台本段階・投稿前・投稿後
ここまでの内容を、事務所やMCNの現場で回せる形にすると、確認のタイミングは三つになる。台本段階、投稿前、投稿後だ。ポイントは、法令別の知識を担当者一人の頭に置かず、質問の形にして誰でも同じ結果になるようにすることにある。以下の表は、この記事で確認した一次情報から逆算した最小構成である。
| 段階 | 確認する問い | 根拠 |
|---|---|---|
| 台本段階 | 商材の区分(化粧品/医薬部外品/食品/雑貨/医療機器)を広告主に文書で確認したか。効能を示す動詞が「与える・整える・保つ・防ぐ」の範囲か(化粧品)。「治る・効く・改善・若返り・血行・こり・むくみ」が食品・雑貨に出ていないか。「No.1」「〇%」「認証・承認・国が認めた・海外で認可」が出た場合、その根拠資料を預かったか | 化粧品56効能通知、46通知、東京都「雑貨等の広告について」、No.1表示報告書、健康食品留意事項 |
| 投稿前 | サムネイルと冒頭3秒で広告だと分かるか。「PR」「広告」「〇社から提供」が本文冒頭など認識できる位置にあるか(ハッシュタグの末尾だけになっていないか)。ロゴ・認証マークの使用許諾を文書で確認したか。体験談の内容は広告主が15日以内に根拠を出せるものか | ステマ規制運用基準、景表法7条2項運用指針 |
| 投稿後 | コメント返信で新たな効能を語っていないか(返信も表示になりうる)。広告主から表現変更の連絡が来た際、修正・削除を即日で行える体制があるか。台本・確認記録・根拠資料を案件単位で保存しているか | 景表法5条・薬機法66条(「流布」も対象) |
三段目の「コメント返信」は見落とされやすい。投稿本文は慎重に書いても、フォロワーから「〇〇にも効きますか」と聞かれて「効きましたよ」と返してしまえば、その返信は66条の「記述し、又は流布」に当たりうる。PR案件の投稿については、コメント返信の定型文まで台本に含めておくのが安全だ。代理店や広告主と分業する場合、どの段階を誰が見るかは事前に決める必要がある。ディレクション型・マッチング型・事務所型の代理店で確認の主体が変わるので、契約書に「表現の法令確認はどちらが最終責任を持つか」を書いておくと、事故のあとに揉めない。
表示に関するルールは、この先も増える方向にある。日本のステマ規制は2023年、景表法改正は2024年に施行され、海外ではEUでAI生成コンテンツの表示が法的義務になった。「何を言ったか」だけでなく「誰の表示か」「何で作ったか」まで開示を求められる流れの中で、PR投稿のチェックリストは一度作って終わりではなく、四半期に一度は消費者庁と厚生労働省の公表資料を見て更新するもの、と位置づけておくのが現実的だ。書けない言葉を覚えることより、なぜ書けないかを法律ごとに理解しておくほうが、次に新しい商材や新しい規制が来たときに応用が利く。
本記事は公開されている法令・告示・通知・行政資料を筆者が整理したもので、法的助言ではありません。個別の商品・表現の適否については、広告主の法務部門、弁護士、または所在地の都道府県薬務課・消費者庁の相談窓口に確認してください。記載内容は2026年9月時点で確認できた範囲に基づきます。
本記事は、株式会社TORIHADAが運営するクリエイターエコノミー専門メディア「CREATORS POST」がお届けしました。最新のマーケティング・クリエイター動向を、実務目線で発信しています。
この記事はAIを活用して書いています。



